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【1958年大映、市川崑『炎上』】


観ると良い映画。

格調高い文芸作品。笑えるとか泣けるとか萌えるとかそういう娯楽要素はバッサリ切って捨ててあります。

三島由紀夫『金閣寺』が原案で、取調室における回想として始まる、犯罪者の内面描写です。冒頭に「これは架空の物語である」旨、ていねいな注意書きが示されます。お寺の名前は「しゅーかく寺」に変更してあります。

被差別が重要なモティーフになっており、いわゆる差別用語に傷つく若者たちの姿が直截に表現されています。同情的ではないところが市川流。

構図の美しさとともに、間合いによって人物の心理を表現する技が印象的です。

中盤は「仲代達也が主役を食っちまう」の巻。生まれながらの色悪というか、フィルム・ノワールそこのけというか。でも市川雷蔵は誠実な表情で受け留めます。

女性の狡猾さ・男女関係の打算ぶりを指摘する辛辣さも、フランス映画を寄せ付けません。

「男のお友達同士って、見ててもええ気持ちのもんやわ。うらやましいわ」

言わんでもええことを言って自己主張したがるのが、間にはさまれた女ですな。

若い女優たちも上手いものですが、脇を大物が固めており、演技というものを知る勉強にもなろうかと思います。北林谷栄(トトロのおばあちゃん役)が圧巻です。

内容については、やっぱり差別する人がいることが悪いのです。みんな鶴川ちゃんみたいだったら良かったのです。母親がもっと図々しく生きる人だったら、主人公も追いつめられなかったのです。和尚はなんだかんだ言って、女と切れてないのです。

でも、お母さんはお母さんなりに心ばえが美しい人だっただけなのです。和尚だって、お腹の大きい女性を無一文で追い出すほど非情ではなかっただけなのです。

……というあたりをきちんと映し出しつつ、それでもやっぱり犯罪の実行に至ってしまう人には、どっか甘えた部分があるというあたりを外さないところが市川流で、この「良薬は口に苦し」というか、苦すぎてむしろ爽快という読後感は『犬神家』にも通じるよな、などと思い出すのでした。

(映画の「観後感」って言葉がないのは不便ですね。)

差別用語の問題があって、もはやテレビ放映も再上映もできない作品かとは思いますが、戦中・戦後の風俗描写の貴重さと併せて、長く残されるべき名作だと思います。

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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。