やおい趣味で読み解くドラマ『清盛』。

  06, 2012 09:17
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今更だなァと思いつつ。

やおい趣味の要点は「男性社会における『負け犬』を『女』と見なし、これを可愛がることで女性が自己満足と優越感を同時に得る」というものだ。

時代とともに暴力描写が好まれなくなり、表現がマイルド化する傾向にあるが、本質はあまり変わらない。

( gay は自分を「女の代わり」「女の仲間」と見なされることを嫌うので、この趣味を非常に嫌う)

人間は自分に似たものを可愛がる。(やおい趣味に基づく創作物がBLだが)BLでなくても女性が書いた作品には「料理・育児がうまい男性」「女心の機微を理解してタイミングよく声をかけてくれる男性」などが登場する。

可愛がることがなぜ優越感を生むのか?「あなたはそれでいいのよ」と存在の許可を与えることになるからだ。それが自分に似たものであれば、自分自身を許すことになるから、自己満足をも生む。

許可を与えられる者より与える者のほうがエライ。許可を与える者は、与えることによって「上から目線」に立つことができる。自分に許可を与えれば、自分自身の主人であり得る。

だからやおい的世界観においては「女はエライ」という主張と「男は弱い・可愛い」という主張が両立し得る。(独身女性が男二人を祝福するという描写がBLには時々ある)

ところでドラマ『清盛』における名セリフの数々を挙げてみる。

「女が男を支えているのよ!社会に本当に必要なのは女性パワーなのよ!」
「私、一生あの人についていくって決めたわ」
「あの人がいなくなったら私どうしたらいいのか……怖いわ」
「どうせお父さんが元気でいる限り、私の自由なんて無いんですからね!」

上から順に義朝・清盛・後白河院・頼朝の迷セリフを女性化したものだが、まるで違和感がない。『清盛』における男性キャラクターの世界観は、非常に女性的である。一方で女性キャラクターは、
「遊ぶように夢中で生きましょう」
「住吉明神のお世話にはなりません」
と毅然としている。伝統的な価値観からいうと、男と女が逆転している。

本当は女は強い。一人でも生きていける。
本当は男は弱い。二人三脚でなければ生きていけない。

この主張は1970~80年代だったらウケた可能性がある。そのようなことが言われ始めたのがあの頃だった。同時期にやおい趣味が台頭し、全盛を極めたといっていいだろう。

当時は日本女性の社会進出が端緒についたところで、セクハラも多かったので、「本当は男(の肉体)だって女と同じでしょ?」という主張が皮肉の鋭さを持ち得た。いまでは女性の状況はいくらか緩和されたので、やおい趣味も「女性の余技・娯楽」としての性格を強めている。というかそのようなものとしてしか認められない。

したがって「女は強い・男は弱い」というテーマは、今さらやられても斬新を通り越して逆に古い。現代に受け入れられるのは、どう考えても「男は(従来通り)強さと賢さ・自制心を備え、同じものを女性も備えていて、助け合うことができる」という人物設定で、ヒットした洋画も『篤姫』もそれで出来上がっている。まして篤姫は「新時代を受け入れつつも、徳川の誇りを守る」を打ち出して受け入れられた。

脚本家のプロフィールはいまだに公開されていないが、「世のため人のために王家の専制を倒す」という(ベルばらかとツッコミたいような)単純な階級闘争史観の古臭さとあわせて、女権意識が妙に古臭い。 ※だから女性受けを狙って男性が書いてスベッた、という可能性もある(-_-;)

ともかく制作陣と俳優は脚本の意を汲み取り、おばかで泣き虫な清盛を生々しく真正面から描くことに成功した。それはそれでよい。視聴者が求めたものと大きく違っただけだ。

人間は自分に似たものを可愛がる。脚本家は「愚かだが一生懸命な清盛」を可愛いと思いながら書いたように見受けられる。視聴者も同じように「可愛い♪」と思ってくれると踏んだのだろう。「萌え」を共通の前提にする、いわゆる同人の手法である。

が、世間はもう少し単純だった。「大人は汚い」「だから私も大人にならない」と叫ぶ清盛に「ついて行けない」と判断した。可愛いとは思ってくれなかった。男性が女性的であることに異様さを感じ、理屈がむずかしいと感じ、「理解できない」と判断した。

可愛いと思った人、面白いと感じた人は、今でもついていっている。「中二病」と茶化しながら毎回ブログを書く人は、承知のうえで「つきあってやらァ」と思っている。

結論? もはや課金放送にするべきだ。わかる奴だけついてこいという制作態度なのだから。(ほんらい創作物ってそういうものだし)
視聴人数の把握も確実になるだろうから、「(必ずしもテレビで視聴するとは限らない時代に)モニター数字が何を表しているのか」で右往左往する必要もなくなるしね。
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