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【清盛語り】平均視聴率表を眺めて思い出に耽る。

(第35回を後回しにして)なんだかんだ言いながらよく見たなァという感想。(まるで全て終わったかのように)

印象的なシーンは多かった。あらすじなど読み返すと次々と思い出されてくる。女性たちの顔立ちが美しく、衣装が色鮮やか・質感もふくよかで、目に心地よかった。
男性陣は敵味方とも汚くて見分けにくかった(笑)保元の乱の大鎧は素晴らしかったなァ ・:*:・(*´∀`*)ウットリ・:*:・

音楽は、じつは一週間のあいだ頭から離れない。オープニングのティンパニとホーンが加わって、ややジャジーに盛り上がるあたりが好きだ。作中でよく使われる Funeral march と、チェロの無伴奏っぽい曲も好きだ。前衛っぽくて。タルカスはよくぞ使ったと思う。
たいていのドラマのBGMは「情感をあらわす効果音」の役に徹しているが、この作品では全てが「遊びをせんとや変奏曲」として、あえて耳に残るようにできていた。

残念なのは最初にうっかり革命思想的なことを言わせてしまったことで、作者は若気の至りを愛しんで書いたのかもしれないが、まさか本当に天皇制廃止・農地解放など革命を起こすわけにいかないので、その後は「若い時の志を忘れて血族の出世を自己目的とする俗物になり下がった」という下向きな展開しかあり得ないことになってしまったことだ。

清盛は誰かに讒訴されたとか陰謀に巻き込まれたという様子がない。実際は無理をしない性格だったはずだ。愛想もよかったかもしれない。ケチは嫌われるから、気前は確実によかった。
「たまたま武士としては良い家に生まれて、時代の状況に恵まれ、本人も慎重な性格だったのでそつなく昇進した」と当時の記録に伝わるとおり素直に順を追って描けば、少しずつ出世する様子に共感もしやすかったのかもしれないが、「革命的」の方向性をちょっと間違えた結果の「うっかり海賊王」発言の後が続かないことを思えば、脚本は見切り発車だったと言ってよく、goサインを出すほうにも読みの甘さはあったのだろう。

信西との友情も濃く描いたが、「彼にかわって科挙を実施した」などの実績はないのだから、「義と悪をひっくり返す」(by 兎丸)件は忘れたことにするしかない。(だから「おもしろき世」とは何なのか、どこで回収するのかという疑問・クレームが繰り返し提出される)

主人公本人だけはそのことに抵抗して繰り返し中二病状態に退行し、「おもしろーー」と叫んでいたわけだが、彼だけが北面の中で不潔でいい理由はない。白河院の子だからという理由はかえってまずい。白河院(と平家)への反感を増すからだ。じっさい鳥羽院は忠盛の忠誠を疑っていた。駆け引きだったとしても。

「なぜお前の子は北面のくせに身ぎれいにしないのか。北面の主人である儂を軽んじておるのか。平家は彼を担いで謀反を起こすつもりか」というふうに思われたら非常にまずいし噂が立つだけでもまずい。宮廷はそんな疑心暗鬼のスクツだが、親子して状況を理解していないし脚本(演出)にはその配慮がない。

中二ぎみなのは忠盛も信西も重盛もそうだ。目上の人を怒鳴りつけても反感を買うだけで聞いてもらえるはずがないことを(その時点までの人生で)分かっていない。忠正は軍議の席で跡取りの話を始める。多くのキャラが礼儀知らずで、展開は最初から強引だった。

あげくに「ひたすら出世」することに無理に精神性を付加するために「あの人が私を呼んでいる」とラブソングのようなことを言わせてしまったせいで、一部視聴者の腰が引けた……

個人的には「義経がジンギスカン」という噂もあるくらいだから「海賊王になればなっちゃっても良かったかも」と思っている。時代に先んじすぎた革命に向かって後先かんがえずに走りだした若者たちを描けば、それはそれで爽やかな作品になったかもしれない。マンガ上等。

太宰府を占拠して九州連合を率い、都へ攻めのぼるのだ。追討吏に任じられた忠盛と一の谷あたりで親子タイマン勝負。「後悔はしていない!」

夢想はともかく……

『江』の年間視聴率が17.7%。『清盛』の第1回視聴率が17.3%。
江を観ていた人がそのまま「新番組が始まった」と点けてみた格好。

第2回は松ケン登場で微増。第3回は玉木登場で微減。
忠盛とーちゃんがカッコ良かった第4回「殿上の闇討ち」で微増。

第5回「海賊討伐」で、なぜかストンと16.0%へ下がる。信西が五位の赤い袍で公卿たちにケンカ売った回。たまこっちが超天然ぶりを発揮して鳥羽っちを泣かせた回。どっちも天然じゃいい勝負だと思われた。直後にナリコっちを押し倒して、ファミリー向け廃業宣言。

第6回「西海の海賊王」は、更にスコーンと下がって13.3%。前代未聞の制作費を投じた大海戦スペクタクルを浅田真央にぶつけて惨敗。人気のフィギュアスケートに遠慮して放送日を変えたりなどすれば、その時点で「負け」と言われるのだろうから、せっかく撮った作品が視聴率合戦の捨て駒にされているとも言える。役者の努力も現場スタッフの苦労も気の毒だ。といっても録画で観ている人も大勢いるはずだから、録画率という数字を出せるようになると評価もだいぶ違うだろう。……出してはいけない事情があるのか(怖い考えになってしまった)

第7回はタイトルも面白い「光らない君」野外ロケが爽やかで美しく、初々しい恋愛が描かれ、「犬君が雀の子を」でうまくまとめた回で、一話完結的な洒落っ気があった。ちょっと盛り返して14.4%。ただしここから15%を超えることがなくなる。つまり第5回までで「もういいや」と思ってしまった人が何割かいた、ということだ。

第10回で義清が散ると漸減する。第12回「宿命の再会」で玉木義朝が帰ってきたことはモニターさんにはあまり魅力ではなかったみたいだ。面白かったんだけどなァ。

たまこっちが病に倒れた回で、鳥羽院が「水仙~~」と叫ぶ。義朝は東国武者に動員をかけて春の遅い木曽から水仙をもたらす。義朝カッコいいと思った。清盛かげ薄いと思った。主人公はどっちだと思った。由良姫へのプロポーズの強引さにも萌えた。清盛の「もうお前でよい!」には初めて「可愛い奴だ」と思ったかもしれない。

底を打ったのが第13回「祇園闘乱事件」11.3%。4月1日だった。春の改編期でもあり、裏番組はスペシャルがそろい踏みした。清盛が神輿をまっすぐ射抜いて、その立ち姿は見た目に割とカッコ良かった回だ。本人は相変わらず屁理屈小僧だったが、鳥羽院が「わしを射てみよ」と仁王立ちになり、二人をつなぐ「白河の血」が大きな意味を持ち、清盛の反抗心が初めてストーリーに前向きに生かされた、印象的な回だった。だったのにーー

平均視聴率は毎分0秒時の視聴率の合計を番組の放送時間で割ったものなのだそうで、それが一旦下がってまた上がるということは、「先週は見なかったが今日はどうかな」と思って点けてみる人がいくらかいる、ということだ。それがチャンネルを替えなければ数字は維持される。

このあとまた「13→12→11」ときれいにカウント「ダウン」する。第16回「さらば父上」は要するに回想、第1部のエピローグのようなもんだったから「今日はもういいや」とチャンネルを替えてしまった人が多かったのだろう。

大作『坂の上の雲』の最終回、NHK大阪の傑作で遷都1300年タイアップ企画『大仏開眼』も数字にしてしまうと11%。「歴史が好きだから見る」「この機会に勉強する」などという気持ちで観る歴史ファン・歴史ドラマファンが常にそのくらいいる、と思っていいのじゃないだろうか。だから落ち着くところに落ち着いたのだと思う。数字に現れないところで「伸びしろ」が確実にあるのがこの作品。今まで大河を見なかった人を引きずり込んだ可能性は高い。

今後は賛否両論を引き起こすエロス描写と攻撃的な演出をまたこの枠でやっていいのか、「大人のための時代劇」という枠をつくるのか、考えたらいいと思う。(つくってくれたらついて行く)

今後は……10回程度で源平の合戦をたどるはずだけど……頼朝が心配だ。なにしろ第1話からすると、平家を滅亡させた一族郎党の苦労を「お前たちのおかげだ、よくやった」ってねぎらってやらなきゃいけない場面で「お前らより清盛のほうが先見の明があったんだ! 彼の本当の価値をわかっているのは俺だけだ!」と(いう意味のことを)怒鳴っちゃうBL系ダメ棟梁。第3回アバンタイトルにおける「本当のことだから仕方がない」という開き直りはひどかった。下手すりゃ謀反を起こされる。確かにその後の彼は郎党を根絶やしにする方向へ動くわけだけど、そんな伏線いやだ(´・ω・`)
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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。