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【ヤマトの不運、進撃の中年。】


先日、ジグソーパズルを買いに行ったら『ヤマトガールズ』という絵柄を発見しました。「ヤマトのエヴァ化に何の意味があったのか」としみじみした次第です。

いわゆる同人活動の出発点になったと伝えられる作品が、そのセンスでリメイクされて総決算の観を呈したのは、感慨深いとは言えるのかもしれません。


【若者の誇り。】

満を持して再発進したかに見えた宇宙戦艦の不運は、巨人の進撃と重なったことでした。

比べてしまうと、ヤマトが1970年代精神の産物であることが一目瞭然です。

「オイルショックと公害で、もうどうにもならないようだが、外国まで勉強に行って、最先端技術を持ち帰れば、まだ何とかなる。そのために立ち上がるべきは、優秀な大学生である」

実際に、その後、低燃費自動車と半導体の時代が来て、なんとかなったのです。ヤマト乗組は、寄せ集めの子供たちではなく、優秀な士官学校卒業生でした。

真っ赤なスカーフを振ってくれたのは、一緒に出航した森雪ではありません。郷里に残してきた彼女です。あるいは、妹です。

首都にある最高学府へ進学する若者の全員が、東京生まれの東京育ちではありません。多くが地方の高校で優秀な成績を上げ、地元の期待を背負って、別れじゃないと心で叫びながら上京した人々です。

九州沖の泥に埋もれ、汚れた機体を傾けながら、小さな翼で飛び立ったヤマトは、彼らの誇りでした。


【若者の不安。】

時移って、押し寄せる巨人が象徴したものは、若い世代の「僕らの未来は大量の中年に食いつぶされてしまう」という恐怖でした。

1970年代の時代劇やアニメに登場した悪役は、白髪の老人だったものですが、『進撃の巨人』(諌山創)序盤に登場した普通サイズの巨人は、まだ髪が黒く、腹の出た中年体型でした。

まさに快進撃の勢いで人気が爆発したあの年は、第二次ベビーブーマーが全員40歳に達した年だったはずです。

目を皿のようにして、美少年・美少女を見つけては食っちまう中年は、端的には「オタク」の象徴でしょう。

壁が突破されるという恐怖は、「言葉の壁」を越えてクレームをつけてくる海外PTAや、包括貿易法案や、打ち続いた天災の象徴といっても良いでしょう。

もう、同人も、その作品のファンも、それに反感を持つ若者も、ひとしなみに「中年と世界が壁を越えてくる。逃げ場はない」という恐怖と無縁ではいられないのです。

時代精神の鏡という点で、ヤマトは決定的に外したのでした。


【その後の巨人。】

大型巨人は、髪や皮膚がないので、その色が問題とならず、年齢も人種も包含した、より大きな「世界」の象徴ですが、均整の取れた肉体を持っており、見た目にわりとカッコいいのと、言葉が通じることによって、恐怖が美化されたと言えるので、こっからは純粋なエンタメということになって、体感型アトラクションに納まってしまうのでした。

ホラーというのは怖がってる最中が楽しいので、どっちが全滅して「めでたしめでたし」となっても変な後味ですし、「我々に必要なのは(中年と)愛し合うことだった」ってのは御免こうむりたいと思う若者が多いはずですから、終わり方が難しい物語だと思います。



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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。