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【トラウマは他人を傷つける口実ではないです。】


フロイトは「同じ動作をくりかえす」ことによって、当時では狂人と見なされ、精神病院の片隅で拘束衣を着せられて一生を終わるはずだった人々を「原因のはっきりした病気だから、治すことができるはずだ」と見抜くことによって、救ったのです。

会話を通じて患者の過去へ立ち戻り、一つ一つ証拠を拾い集めることによって、何が起きたのか推理したのです。

同じ時代にミステリという創作物の流行が始まったのも偶然ではなく、たったひとつの真実を見抜くのは冤罪を防ぐためです。

言葉の魔力を神ひとりのものとしておかず、人間が使いこなすことによって、人間自身を救う。そういう人間精神の独立宣言だったはずです。

重要なのは、同じ動作をくりかえす人々自身がそれを「つらい」と感じ、治したいと願ったことです。

当時は一般に「性」を話題にすることが、強く自粛されました。また「親が恥ずかしいことをしていた」「親が悪い人だった」と告発することは、現代人にもためらわれることです。

だから言いたいことがあっても言えない。逆に言えば、本当は誰かに話を聞いてほしい。ひらたく言うと、ともだち欲しい。

そういう心の寂しさの訴えが、くりかえし動作となって表れることを、フロイトという名探偵が見抜いたわけです。

この知識が本末転倒すると「お母さんがトラウマになっているから、私が他人を傷つけるのも当たり前である」という、暴力の口実になります。

フロイトの目的は「治す」ことです。

学説を利用されることではありません。

自分の心に問題があって、周囲に迷惑をかけていることを自覚しているなら、受診しましょう。

フロイトの時代には、脳を落ち着かせる薬剤が存在しませんでしたから、言葉という魔力(の一種)を駆使したのです。

が、薬があれば、彼だって処方したでしょう。

本当に直すべきは、薬をもらいに行く精神科の患者を差別する社会のほうです。

今では「薬そのものは対症療法であって、根本的には話し合うことだ」という正しい知識が広まって、グループ発表会なども行われるようになりました。

ディズニー映画『シュガーラッシュ』冒頭でもやってましたね。



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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。