【BLと文芸3 ~森鴎外『ヴィタ・セクスアリス』が指摘したこと。】

  01, 2015 12:52
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金井湛くんの報告によれば、少年とは旧制高校生の寄宿舎における受身を表す隠語だそうです。

「軟派」とは清潔らしく見える白足袋を着用して女性のいる店へ通う若者で、「硬派」とは粗野な風体を保ちつつ、年下の同性を相手にする若者で、前者には都会慣れした東京出身者が多く、後者には九州男児が多かったようです。

これは九州にはゲイが多いって話では全然なく、尚武と男尊女卑の気風から相対的に少年へ傾くもので、都会慣れしてくると急激に「軟化」し、服装の趣味が変わり、女性の元へ通っては放校処分になることもありました。(逸見くんの例)

ついに軟化せずに卒業すると、かえって清廉な若者であるというので、堅気の女性と結婚し、その裕福な実家の援助を受けることができたりもしました。(古賀くんの例)

男性にとって女性とは未知の存在であり、上京したばかりの若者にとって都会とは未知の存在です。

それにいちいち驚かないようになる、共通したお洒落センスを身に着ける、機嫌をそこねない会話ができるようになるというのは、確かに大人になった証拠なのかもしれません。

対して「少年」との関係が暴力的であるのは、まだ世慣れない若者らしさがそのまま弱者へぶつけられているからで、入寮儀式としての鉄拳制裁などにも一脈通じます。

それによって(本人たちは意識していなくても)都会的ではないことの劣等感を、ていよく隠蔽することができたわけです。

これを「男同士の気安さ」と呼ぶなら、若輩者にとっては堪ったもんじゃなかったはずで、安達くんが古賀くんから逃げ出す道理です。

歴史上に「衆道の契り」として美化して伝えられてきた物語の実態が、ストレート男性同士のパワハラだったことを医師らしい冷静さで指摘したのが鴎外です。

なお、この印象が本末転倒すると「女性で失敗した男はホモになる」となるわけです。


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