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【BLと文芸3 ~森鴎外『ヴィタ・セクスアリス』が指摘したこと。】


金井湛くんの報告によれば、少年とは旧制高校生の寄宿舎における受身を表す隠語だそうです。

「軟派」とは清潔らしく見える白足袋を着用して女性のいる店へ通う若者で、「硬派」とは粗野な風体を保ちつつ、年下の同性を相手にする若者で、前者には都会慣れした東京出身者が多く、後者には九州男児が多かったようです。

これは九州にはゲイが多いって話では全然なく、尚武と男尊女卑の気風から相対的に少年へ傾くもので、都会慣れしてくると急激に「軟化」し、服装の趣味が変わり、女性の元へ通っては放校処分になることもありました。(逸見くんの例)

ついに軟化せずに卒業すると、かえって清廉な若者であるというので、堅気の女性と結婚し、その裕福な実家の援助を受けることができたりもしました。(古賀くんの例)

男性にとって女性とは未知の存在であり、上京したばかりの若者にとって都会とは未知の存在です。

それにいちいち驚かないようになる、共通したお洒落センスを身に着ける、機嫌をそこねない会話ができるようになるというのは、確かに大人になった証拠なのかもしれません。

対して「少年」との関係が暴力的であるのは、まだ世慣れない若者らしさがそのまま弱者へぶつけられているからで、入寮儀式としての鉄拳制裁などにも一脈通じます。

それによって(本人たちは意識していなくても)都会的ではないことの劣等感を、ていよく隠蔽することができたわけです。

これを「男同士の気安さ」と呼ぶなら、若輩者にとっては堪ったもんじゃなかったはずで、安達くんが古賀くんから逃げ出す道理です。

歴史上に「衆道の契り」として美化して伝えられてきた物語の実態が、ストレート男性同士のパワハラだったことを医師らしい冷静さで指摘したのが鴎外です。

なお、この印象が本末転倒すると「女性で失敗した男はホモになる」となるわけです。


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Misha

Author:Misha
スマホ時代にさからう評論系長文ブログ。冷静に通読できる大人の読者様を想定しています。

「若い人」に直接呼びかける文章は、18歳以上のヤングアダルト対象です。高校生は受験を最優先してください。

書く人は、新旧とりまぜて映画とアニメを見ながら文芸書に取りくんでみたり、昔の漫画を思い出したり、お国の先行きを心配したりしております。

記事中の色つき文字は、映画中の台詞・挿入歌からの引用です。あらすじは、あまり申しませんので、楽しみに御覧ください。取り上げる作品は、暴力・エロスなど特殊な要素を含んでいることもあります。

ときおり、耽美・BL・同人・LGBTに言及します。いずれの分野からも、偏見と差別と自虐がなくなるといいと思っております。

「二次創作の責任を二十四年組に押しつけるな」「実在同性愛者に甘えるな」が基調です。

全体として、二十四年組ファンが社会学者に物申すという珍しい構図。一部勘違い同人を叱責することによって全体を守るという意図もあり、ときにかなり辛口です。

記事は時々予告なく手直し・削除・分割しております。保存は個人的閲覧の範囲で、お早めに御随意に。転載・改変利用は固くお断り申し上げます。

解題


Casketとは、玉手箱。

でも検索すると棺桶がならびます。来世まで持っていきたい好きな作品の記録帳とご理解ください。