【やおいと腐女子とBL読者の違い。】

  17, 2015 11:46
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女性が女性に読んでもらうつもりで仕上げた作品に対して、男性が「書くな」とか「書き方を変えろ」とか言ってきたら、「女の自由でしょ!」と言い返す。

この意味において、BLは男女同権・女性解放の一環です。

だからといって「腐女子はフェミニズムです」と言っちゃうと、「意味が違う」と思う人もあります。

「腐女子」という言葉は、元来が「二次創作者」を意味するからです。

それは「やおい」という単語からの言い換えです。

なぜ言い換える必要があったのか?

重大な誤解が発生したからです。


【山も落ちもあるが権利がない。】

もともと「やおい」とは、字義通りの意味ではありません。物語には、ちゃんと山も落ちもあるからです。

山は「ついに二人が結ばれる時がきた」、落ちは「その後は末永く幸せに暮らしました」、意味は「めでたしめでたし」。

恋愛物語の配役として、既成キャラクターを使用するので、人物紹介にあたる前段を省略でき、てっとり早く「サビ」の部分の感動だけを味わうことができるという技法です。

ただし、既成キャラクターの使用に関して「著作権」と言われると、返す言葉がないというものです。

くりかえしますが、本来は「モノ」の名前です。

何故そんなものが存在するかというと、いわゆる同人誌即売会というイベント限定のジョークグッズであり、お土産のようなものでした。

同人誌にもいろいろありますが、いわゆるコミケに集まる創作同人は、SFを母胎にしています。

SFとは現代社会のパロディということもできます。元々「あべこべ」の世界を面白がる要素を持っています。同時に、若者によるアングラ芸術が、権力(の一種であるマスメディア)を茶化すのも当然です。

母胎にしているというか、不肖の玄孫くらいかもしれませんが、そういうものが生まれてくること自体は、理解に苦しむものではありません。

販路が限定されていたので、問題視されなかったものが、うかつなイベント参加者の口から外界へ漏れて、隠しおおせないことになるとともに……

イベント参加者の一部がわざわざゲイタウンまで押しかけて、ゲイをからかった(と彼らが信じた)ために、彼らの口から「やおいは無礼である。全ては竹宮恵子のせいである」というクレームが挙がったので、えらく話がややこしくなったのでした。


【言い換え。】

「腐女子」という言葉が使われ始めたのは西暦2000年頃とされています。

いっぽう、「やおいはトランスゲイである」と定義した書籍が発刊されたのは、1998年です。(榊原『やおい幻論』)

ワードプロセッサ専用機の普及はもっと前。ウィンドウズ機も1995年頃には普及し始めましたから、誤変換言葉が西暦2000年のタイミングでしか生じ得ないということはありません。

つまり、もっと前から知られていて、一部で面白がられていた(かもしれない)ものが、一気に流行する社会状況のほうが用意されたのです。


【クレーム対応。】

すでにゲイコミュニティから「やおいは無礼である。我々に対して人権侵害を働いている」というクレームが発せられている時に「やおいはゲイです」と発表すれば?

「ゲイって無礼者でしょ(笑)」という意味になります。

また「やおいはトランスである」と言えば、本物のトランスから告訴される恐れがあります。

トランス男性が、GLBTコミュニティの先輩に対して人権侵害を働いたという意味になるからです。名誉毀損です。

もともと権利的に不透明な二次創作が、人権問題を起こしたとなれば、創作活動そのものが全面禁止される恐れがあります。

これを防ぐには「私たちは、くさっても女です」と言う必要があるのです。


【BLは自虐していません。】

女流作家が「衆道の契り」を主題に創作した作品については、1978年に専門誌『JUNE』が創刊され、1992年には角川書店が読みきり文庫レーベルを独立させています。

大手出版社が「当社のご紹介する作品には山も落ちもございませんから、お手にとってご覧頂くには及びません」と宣伝することはありません。

また「当社がご紹介する作品をご購読いただくと、大事なお嬢様の人間性をくさらせてしまいます」と宣伝することもありません。

他人が「あの出版社の作品を読むと(以下略)」と言えば、営業妨害であり、名誉毀損です。

購読者が「大手出版社の本を読んだから、くさってしまってごめんなさい」と言えば、同様に出版社にとって不名誉となります。

オリジナル作品を手がける作家、出版社、購読者は自虐するべきではないのです。それは、自分自身の表現の自由を侵害することでもあります。


【青い鉱石、赤い宝石。】

なお、他社の青春小説シリーズが青春の輝きを象徴する青い鉱石をシリーズ名に掲げていたのに対して、角川書店が新シリーズに採用したのは、赤い宝石の名前でした。

それは成熟した女性を連想させます。

スニーカーを脱いで、早く男になりたい少女のための「革靴文庫」ではないところがミソです。

それは、少女漫画と少女向け青春小説を卒業した18歳以上の大人の女性のための娯楽作品であることを、すでに自覚していたと思われます。


【非婚者という意味でもありません。】

「やおい」とは販売品の分類を示す注意書きに過ぎませんから、それを制作頒布する人自身が自虐していたのではありません。

二次創作という「モノ」の名前を意味する隠語が、まちがって「人」の名前だと思われた挙句に、本物のトランスゲイへの(利己的)配慮から言い替えられて「腐女子」になったのですから……

じつは「嫁にいかないまま年をとって食えなくなった女」のことではありません。

「二次創作BLを手がけても、男ではなく、女です」と当たり前のことを言っているだけです。

その当たり前のことを、わざわざ言わなければならないところまで、誤った予断に満ちた「研究」によって、追い込まれたのです。



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