【メアシャムとブライヤーとクィア・リーディング。】

  21, 2015 10:05
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メアシャムのパイプを愛用する私立探偵は、議論をする気になるとブライヤーのパイプに持ち替えます。

メアシャム(海泡石)は軽いので、くわえっぱなしにするには良いのですが、熱伝導率が高いので手に持つことができません。

議論をするには、パイプを口から離す必要があるので、熱伝導率が低く、手に受けることのできる厚手の木製パイプに煙草を詰め替えるわけです。

そもそも喫煙自体を中止すりゃいいような気もしますが、そうも行かないのでしょう。

伝記作者のほうは、その様子を見て、急に「僕は所用を思い出した」なんつって、そそくさ逃げ出すことはありません。

「おいでなすった」と思いながら、同居人が戦闘準備を終了するのを待つわけです。

探偵のほうは、同居人が医師免許保持者であることを知っており、ひとかどの観察眼と論理性を有することを知っています。自分の知性を披露するに相応しい相手として認めているわけです。

それが「御座んなれ」という顔で待っていてくれるのだから、新しい煙草より先に、闘志に火が点こうってものです。

ベーカー街221Bでは、今日もこんな光景が繰り広げられているはずですが、まったくもって良いコンビです。

数少ない探偵自身の自著にある「(伝記作者が)私を置いて結婚してしまった」という文章は、どう解釈したものか、しばし迷った読者も世界中に大勢いるかもしれません。

こういうのは「この二人あやしい」と思ってる内が楽しいので、言っちゃおしまいってものです。

言わんでもいいことを言ってしまうという点では、クィア・リーディングと“やおい”(=二次創作)は共通項があり、田亀源五郎ほどの人が「違いが分からない」という所以であるかもしれません。

表現力としても、影響力としても、ゲイ心理を他人に語ってもらう必要のない彼は、「ストレートのお節介はご遠慮ねがいたい」と思っているのかもしれません。


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