1960年、大映京都『大江山酒天童子』

  09, 2015 10:30
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製作:永田雅一
音楽:斉藤一郎
脚本:八尋不二
振付:花柳有洸
監督:田中徳三

総天然色特撮時代劇。「目千両」光線炸裂する新旧美男対決。

伝統美への尊敬、意欲的な特撮。見どころ盛りだくさんの娯楽大作です。合戦部分は大ロケーション敢行。人馬大量投入。炎も本物。あいた口がふさがりません。CGのなかった頃です。

くり返します。CGのなかった頃です。現場の熱意が伝わります。

大江山の鬼退治、じつは朝敵退治という合理的解釈。朝敵が恨みを抱いた理由は、公儀への私怨ではなく、関白道長の専横です。

鬼が都をおそって、腕を切り落とされ……といった伝説の筋書きそのものはほとんどいじらず、裏にあった(かもしれない)男女の葛藤をつけ加えています。男女とも台詞の言葉遣いが古典的で耳に優しいです。こういう脚本を書ける人、いなくなっちゃいましたね。

セットも衣装もたいへん豪華です。女性が活躍するメロドラマ部分と、男の稚気あふれるチャンバラ要素・特撮要素のバランスが良いと思います。

雷さま演じる頼光以下、四天王は美男ぞろい。メイクが歌舞伎を踏襲していた頃で、男たちが太いアイラインで眼を強調しているのが愛らしいです。悪役の配下もなかなかの色男たちです。

葛城山の土蜘蛛も友情出演。いかに頼光~~。妖術で寝所に侵入することができるなら砦に立てこもるまでもなく最初からやっちゃどうだとかは言わない約束。茨木さんカッコいいです。

ミュージカル映画の要素もあるようで、小鼓と雅楽器のふしぎな共演が聞かれます。振付は日本舞踊なので、外人さんが見るとさぞかし混乱するでしょう。

山中の砦では、時代考証をすっとばした斬新なダンスが見られます。当時のアンダーグラウンドの熱気が感じられるように思います。ところで観世音菩薩ってほんらい男性のはずですが、日本ではすっかり女神信仰になっちゃってるのですね。朝敵=仏敵という伝統的解釈が見られるようです。

映画の筋に戻ると、たぶん梁山泊などをイメージした冒険活劇にしたいわけで、あまりつっこんで設定してないので、大江山チームのやりたいことが今いちハッキリしないとか、ちょっと話の荒さはあります。

長谷川一夫、市川雷蔵のファン(とくに女性)のためのサービスって要素があって、どちらにも汚れ役はやらせられない。また例えば「男の美学」を一途に追及した場合は、『切腹』『無法松の一生』『レスラー』のように、主人公が斃れちゃうわけですけれども、女性はやっぱり愛する人に死んでほしくない。

オスカル・フランソワはまだしも、1965年のNHK大河『太閤記』には「信長さまを(本能寺の変で)死なせないで」というファンレターが殺到したそうです。

女性がわが身を守って、悪い男を返り討ちにするというのも、やはり女性が見ていて気分のよい場面ではあって、特撮部分・戦場風景を見ると男の娯楽なんですけれども、戦後女性パワーの高まりに配慮したというか、そんな要素もあるようで、『アドミラル』で見られたのと同じ、脚本上の詰めの甘さみたいなものはあります。

でも、そこんとこ割り切って御覧になると、男女とも役者の美しさを活かした緊張感にあふれる名場面がいっぱいで、質の高い国産娯楽映画だと思います。


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