にわかイナゴも歳を取ったのです。

  15, 2015 10:30
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「私は金目のエロ同人の存在しか認めない! なぜなら私は金目でエロを書いたからだ!」

ものすごく自己中心的な自称コミケ同人OBもいたことでございます。

どうも、1990年頃のことしか知らないらしいです。

コミケというところは、1975年に漫画同好会どうしの品評会として出発しました。初期の主宰者は、漫画という表現分野の一層の隆盛を心から願っていたようです。

そこは決して、アニメのパロディ小説を主宰者と著作権者に黙って出品するところではありませんでした。

でも、1970年代末には、すでに一部の女性による特殊な作品の出品が盛んになり始めていたようです。

とはいえ、1980年代前半には、まだ「金目」という意識が低く、おなじ話題を共有できる仲間を求めた人がいたから、「いばら」という言葉や、「カップリング論争」などという言葉も生まれたのです。

(※いばら…人気のない物語をあえて出品する。いばら道を行くという意味。もちろん、わずかでも読者を求めている)

その後、1985年頃に業界の再編のようなことが起きて、最初から意図的に「先輩の書いたものを模倣して金目のエロを量産する」という流派のようなものが確立しました。

これを「イナゴ」と呼べば、だいたい正解かと思われます。

それしか知らないのに威張る人をなんと呼ぶかというと「にわか」です。

だから「1990年の金目のエロ」しか知らない人は「にわかイナゴ」です。だいぶ悲しい感じです。

【エピゴーネンの時代。】

偉大な個性が登場した後には、エピゴーネンの時代が続くのは、どこの業界も同じです。

だから、すべての二次創作BLの模倣の元になった偉大な作品も、あったはずです。

一説には、男性による「百合」というのは、男性が女性の描いた(書いた)ものを見て性別を逆転させることから始まったといいます。だから、すべての二次創作BLとすべての百合の基礎になった、ゴッドマザーがいたはずなのです。

公式には竹宮恵子というビッグネームに責任転嫁することになってるわけですが、竹宮自身は「アニメを利用しなさい」なんて言ってないので、そういう特殊な技法を思いついて紹介した人が、はるか歴史の彼方に実在したに違いないのです。

また、1970年代のプラトニック風味から、1980年代後半における「過激」の流行へのターニングポイントとなった作品が存在したはずで、これは具体的に覚えている人も多いかもしれません。

が、いずれも「戦犯」あつかいされることを恐れて名乗りを上げないので、いまや日本創作界全体に巨大な影響を与えていることは世人の眼にも明らかなのに、誰も『二次創作BLの歴史』を書くことができないという状態が続いています。あと五十年くらい経ったら解禁になるのかもしれません。

とまれ、その後、1990年代の不況に入ると、プロもアマチュアも1980年代に確立した価値観をくり返すことで首の皮一枚つなぐということになりました。

だから、この時代に「同人」的な表現が一般書店にあふれ、人目に留まるようになったのです。だから批判・議論も起きたのです。プロ作家側が反論するつもりで解説書を上梓し、逆効果となる事態も生じました。

その後、経済の状況がなかなか好転しないが、この日本では暴動・内戦が起きるというわけでもないことが分かってくると、「癒し」が標榜され、創作物も新しい局面を見せ始めました。

【柔らかな革命。】

BLは、女性の逃避性と依存性を強め、まちがった特権意識を持たせ、とくに現実の男性に対して批判的な言動を取らせることがあります。

とくに1980年代は、バブル景気による強気ムードと、フェミニズムの理論的支柱があったので、その頃を経験した人の中には、いまだに気を高ぶらせている人もあります。

でも、不況下に「癒し」を標榜する他なくなった1990年代以降の若手は、そのような強気さによって周囲と軋轢を生じることを回避したがる傾向があります。

また、世代間の反感としても「バブル中年にはついて行けない」という意識が一般的だろうと思われます。

これらがハッピーエンド志向・ほのぼの志向・非性的描写嗜好となって表れるので、一見すると自主規制要請に屈したかのようですが、じつは1980年代ふう過激描写に対する「アンチ」として、厳しく対峙しているわけです。

これを1980年代組が読みきれずに「あんた達、ぬるいわ」とか「まだ素人ね」みたいなことを言って笑うと、若手はクレバーですから表面的には「すいませ~~ん」とか言って調子を合わせてくれるでしょうが、腹の底ではものすごく冷たい眼をしていると思えばいいでしょう。

【育ちつつある世代。】

池上彰さんの番組によると、最近の小学校では答えが「どちらも正解」という問題をわざと出すのだそうです。

Aという答えを選んだ子、Bという答えを選んだ子、それぞれに自分の判断の根拠を述べることができれば良いんだそうです。求められているのは丸暗記ではなく、論理性です。

だから、そこから生まれてくる創作家たちにも「二次創作っておかしくないですか?」とか、「著作権ってどうなってるんですか?」とか、「アニパロがエロに限るってことはないですよね?」とか、「どうしてもっと自由に書かないんですか?」とか言っちゃう子が現れて来るでしょう。

これを年長者が「昔から決まってるのよw」とか、「今の子はなんにも知らないのねw」と笑えば、「もう先輩の時代とは違います」って言い返されちゃうでしょう。

同人界の先輩ぶりたい人は、かつて自分が母親に向かって「もうお母さんの時代とは違うのよ! 私のやることに口出ししないで!」と叫んだ日もあったことを思い出しましょう。

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