河合克敏『とめはねっ!』第3、4巻。

  16, 2015 10:30
  •  -
  •  -

三浦先生大活躍の夏休み合宿と、新キャラ登場により、少年少女の恋愛模様も、書道への熱意も一層の深まりを見せました。

まったくもって「キャラ立ち」がひじょうによく、それぞれの立場から発言される書への見識や疑問が響き合って、スリリングな掛け合いとなっています。

文化部の中でも最もおとなしいかのように思われがちな書道部に、なぜか加わっているスケバン・加茂ちゃんの行動力とベランメエも冴え渡ります。

キャラクターの名前が大江・加茂・三輪と続いているのは古典らしさを狙ったのでしょう。個人的には望月さんが好みです。

当然ながら座って書いてるだけの構図が続く書道漫画に、ときどき差しはさまれる柔道少女(望月さん)の豪快な背負い投げシーンが効果的です。

全国優勝の運動部が文化部をかけもちという漫画ならではの強引展開には、なんとか今回で説明をつけました。

ヒゲだるまな柔道部顧問は、なぜか女言葉。ゲイではないようで、女生徒の胸に関心があるようです。しかも独白はふつうに男言葉。印象的なキャラクターです。

やや「媚びた感じ」の新キャラは、今まで登場しなかったタイプで、主役サイドではファンから煙たがられそうですが、脇役なら良いスパイスとなる典型でしょう。

その父親である蕎麦屋のご亭主や、主人公の祖母など、保護者キャラクターも好演でした。

今回特筆すべきは、部長のツーテール眼鏡っこ・日野ちゃんのファンクラブと称し、「入部希望ではなく、書道はやらずに日野ちゃん自身を見学してるだけでいい」とほざく男子が二名登場したことで、加茂ちゃんに部室から蹴り出されてました。なんじゃこりゃ。

暴力性の悪い男じゃないんだけれども、自己主張のしかたを間違えてるという、オタクらしさがよく表現されていたと思います。

「アートが分からん」というのも、彼らとしては「我々の信奉するサブカルこそ至高」という自尊心の表現になるのでしょう。

もしかして、リアルに「日野ちゃん萌え~~」というファンレターが殺到したことへの作者からのメッセージだったのでしょうか。

それとも、むしろ連載誌の愛読者にはオタク系が少なかったから、笑いとして成り立ったのでしょうか。

なるほど、ゲイコミュニティは新宿二丁目へ押しかけて「ゲイを見てるだけでいい」という女性を「女のオタク」と認識したのでしょう。

一言だけ言及のあった「まんが甲子園」は、たしか1992年に始まっており、1980年代後半の同人界の変な盛り上がりを見て、プロ漫画関係者(編集者ふくむ)が「このままじゃいけない気がする……」と思ったのかもしれません。

巻末には、ひき続き全国からの書の投稿作品が掲載されており、その出来映えにインスパイアされて物語が構想されたという裏話も披露されています。

キャラクター紹介を兼ねた楷書の解説でいっぱいいっぱいだった1、2巻に比べて、書に関する情報(薀蓄)も飛躍的に増え、参考文献は随所に提示されており、連載中の漫画家はほんとうに大変だったと思いますが、楽しい仕事だったようにも思われます。

絵柄は現代の漫画家の忙しさをしのばせる部分もありますが、まずまず誠実に描かれていると思います。2008年度の作品ですが、本当に久しぶりに「読める」と思った漫画でした。

なによりも漫画家と編集者、全国の愛読者(書家、さらに僧侶)が総がかりで一つの世界を創り上げていく様子が清々しく胸を打ちます。以下続刊。

Related Entries