それより奥は見てはならないことはない【映画 王の男 感想】

  15, 2011 18:46
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2005年、韓国。
やっと観たのよ!「観に行きたいな~~」と思ってから子供の世話してると、5、6年過ぎるのアッという間なのよ!
それはともかく。
結論から申しますと、非常に後味がよろしかったです。華麗にして卑屈な宮廷人と、野卑にして誇り高い旅芸人の対比が見事な、爽やかな感動作でした。
美麗なシーンのひとつひとつが心のアルバムに残っております。
もっと生々しいエログロ映画だと思ってましたm(__)m
正直そこをちょっと期待してましたm(__)m
HBO『ROME』を見過ぎたかもしれないですm(__)m

っていうか日本の配給会社、宣伝の仕方を間違えてます。「それより奥は見てはいけない」ってあんた『サスペリア』じゃないんだから(古)
むしろ何不自由ない若き王の心の奥の寂しさ、垢まみれの芸人の心の奥の炎、王を惑わす美男の心の奥の素直さ、飛ぶ鳥おとす勢いの寵姫の焦り、そういう「奥」を見てしまう心理劇なわけですが、
予告編では「それより奥は」ってナレーションしながら美男の背筋に触れる絵が映されるから、よっぽどエロいのかと思っちゃうじゃん。
客引きでも間違った先入観を与えるアオリはやめましょう(-_-;)

というわけで物語は、実在の暴君に取材した歴史劇らしいですが、『西太后』『ラスト・エンペラー』みたいに外国との関わりが描かれているわけでもなく、歴史上の事件に言及しているわけでもないので、超美麗歴史ファンタジー、娯楽時代劇として観ることもできると思います。
「お装束も素晴らしい!」(『花よりも花の如く』)
綺麗でした、宮廷人の衣装。広がったチョゴリの艶と地紋が美しい。その下の白いアンダースカートが萌えだ。
刑吏などの赤い帽子に鳥の羽根と大粒のビーズのようなのが飾ってあるのもファンタジックでした。
豪華でした、セット。宮殿の軒先の金細工、花鳥風月が描かれた襖。朱色の柱と緑の窓の桟の対比が美しい。
そして文化の違う人に、これと春日大社・狩野派の襖絵などと中国の遺跡を見せて、「区別しろ」ってのはやっぱ無理だろうな、などと余計なことも思ったり。

それはともかく、ストーリーの根幹は、権力におもねらず腕一本でのし上がろうとする旅芸人と、コンプレックスだらけの若き王が出会うことによって、芸術の花ひらく、ではなく政治的な悲劇が起きるという、哀しい宮廷陰謀劇&人間心理劇でした。
美形を中心にした恋愛ものじゃなかったです。
陰謀についてはクドクド説明せず、重臣たちの(暴君を諌めるという)忠義心を協調し、曲芸師が役者として芸を高めていくことが王の感情を刺激して逆に不幸を呼び、重臣たちの決起を促す、というあたり、テンポよく、しかも残酷場面は(あまり)映さないので、いやらしい感じがしないのが良かったです。
それに何しろ、それを見せる「絵」が美しいんだな。青空・竹林など背景となる自然も、華やかな衣装も、それを着けた人の配置も。

配役は、髭の曲芸師チャンセンが苦みばしった男の色気をたたえて良かったです。
聖王と呼ばれた父への劣等感と非業の死を遂げた母への執着を抱えた王の、癇症でありつつも寂しさを秘めた不安定な目つき。
いかにもツンとした猫のような表情が嫌味にならないほど超絶かわいい寵姫ノクスちゃん、むっちりと風格を漂わせた重臣たちも素敵。
実は私的に、あの宮廷に一座を招き入れた重臣チョソンの、いかにも貴族らしい趣が「この映画ただごとじゃないぞ」と思わせた一因でもあるので、役者の持ち味って大事なのですね。
「三バカ」に相当する芸人たちの、野卑で滑稽な表情・大げさな演技も、昔のコメディ映画を思わせて微笑ましかったです。

前半は曲芸の実演の映像にかなりの「尺」が割かれ、それを見物するエキストラも大人数、その衣装などのウェザリング(わざと汚すこと)なども申し分なし、「お色気系統のストーリーじゃなさそうだな……」と予想外の思いを抱きつつ、見入ってしまいました。あの曲芸部分や小芝居部分は観客も素で喜ぶべきなのかな?

後半は王の寵愛を得て芸人たちの生活が安心したのも束の間、若き王と先代から仕える重臣たちの対立があらわに。
起死回生を狙った芸が王の気に入ったからこそ重臣たちの危機感を呼び、女形が心根素直で王の寂しさを理解してしまうからこそ相方との不和を呼び、相方同士が互いをかばうからこそ不可逆の無残な悲劇が起こる。
寸劇・綱渡り・影絵・人形劇などの芸が心理描写を豊かにし、台詞で説明することを省いて余情を漂わせ、しかも後で効いてくるのは気持ちよく、よく練られてるなぁとしみじみしたり、でもちょっとベタだよね、となんか懐かしいような感じもしたり。

皮肉で残酷なストーリーと救いのない結末なのに温かい余韻が残る、という不思議な好作でありました。

それにつけてもコンギルは目の保養。
赤いおリボン可愛いよ赤いおリボン。彼がつねにウブっぽい表情をたたえていたのが、全体に漂う清潔感の源。でも無理強いされて矢を射るときの目の厳しくも哀しい表情は美しかった。
最初の一座を出奔して小一日以上さまよい歩いたはずにもかかわらず、王の傍らで夜を明かしてしまったにもかかわらず、無精髭がのびていない辺りはご愛嬌。でも鼻の下にほんのり剃り跡が見えたのが「やっぱ男なんだ(・。・; という別の感動を加味したかも。
レンタルで観たけどディスク買っちゃおうかなー
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