MISHA'S CASKET

好きな言葉は残侠と耽美。うぐいすリボン協賛中。

 > 漫画

池田悦子・あしべゆうほ『悪魔の花嫁』を再び論じてみる企画。

池田悦子・あしべゆうほ『悪魔の花嫁』を再び論じてみる企画。

1975年から『月刊プリンセス』(秋田書店)で連載されていた女流漫画作品。数十年の中断を経て、数年前に新刊が商業出版されたんだけど、メインキャラクターたちの身の上に変化がなかったので、年来の読者が戸惑った名作にして迷作。女子高生・美奈子のもとに、クールビューティーな青年の姿をした悪魔が現れて「お前は私の花嫁になる宿命」と宣告するところから始まるので、分類としては少女漫画。きれいなストーカーは、好きです...

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「肝臓のアルコール分解能力は遺伝で決まっている。それで男らしさを測るのはくだらん」

「肝臓のアルコール分解能力は遺伝で決まっている。それで男らしさを測るのはくだらん」

竹宮恵子『風と木の詩』(1976-1984年)序盤、名脇役パスカルの名台詞。ちょっと手元にないので逐語的引用ではないことを御承知おきください。とまれ、戦前の男子校に通う生徒の中でも成績優秀として周囲から一目おかれる者が、これをサラリと言っちゃうわけです。それはやっぱり、当時26歳の独身だった女流による、男性らしさのイメージに自分を合わせることに至上の価値を置く成人男性中心の社会機構に対する挑戦であったと言え...

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成田美名子『花よりも花の如く』に見る女心、男心。

成田美名子『花よりも花の如く』に見る女心、男心。

シリーズ序盤のエピソードに基づく部分的考察。じつは能楽師というのも舞台上の男である以上、女性客から「顔で選ぶ」とか「若さで選ぶ」とか(本人に聞こえないように)言われちゃう可能性はあるのです。実際に『花花』に登場する若手能楽師たちは、女流漫画家自身の好みにしたがって、女性的(少女漫画的)な顔立ちの「イケメン」として描かれていますね。けれども劇中には、女性ファンがお舞台そっちのけでキャーキャー騒ぐ描写...

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1976年-1984年、竹宮恵子『風と木の詩』小学館

1976年-1984年、竹宮恵子『風と木の詩』小学館

これこそ三島由紀夫に読ませたかった。論じている内に40周年を迎えてしまったなァと、ふと思い出したので、改めて述べておきます。あの作品最大の評価ポイントは、全体の構成だと思われます。まず巻頭言によって全体が回想録であることが示され、第一部序盤で第二部の主人公になる人物の存在が暗示された上で、第一部と第二部が時系列的に倒置しており、第三部を最後まで読んだところで、セルジュという若者が、その後の人生をまっ...

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デイモスは裏切りの神であり続ける必要がある。

デイモスは裏切りの神であり続ける必要がある。

池田悦子原作・あしべゆうほ作画『悪魔の花嫁』。1975年から連載されている作品で、不定期掲載となりつつ最終回を迎えていない。少女漫画には時々あるパターンです。デイモスは、裏切りの神であり続ける必要があるので、ヴィーナスとの約束を果たしてしまうわけに行かないのです。現実なら、美奈子がどんどん歳を取るので、永遠の美と若さの女神(の神霊の引越し先)には相応しくなくなってしまい、デイモスは結局「約束を果たさな...

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ジェイムズくん。

ジェイムズくん。

「野生化した人工知能が選挙権を要求してくる未来があり得る」という話を聞いたもんですから、とっさにテレビドラマ『相棒』のジェイムズくんを連想したんですけれども。どうもね。ジェイムズくんというと、黒髪で片目を隠した吝嗇な青年の印象しか浮かんで来ないタイプでございます。どケチ虫な人工知能が国家予算の使い方に難癖つけて、選挙権どころか立候補してきたら、どうしましょう……?なお、1980年代前半の漫画の話をしろと...

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手塚治虫・岩本仁志『MW』再考。

手塚治虫・岩本仁志『MW』再考。

戦後の日本人と「神」と道徳で、思い出しました。あの話は、「ホモセクシュアルのキリスト教徒が戒律か人間愛かで徹底的に悩む宗教物語」か、「無宗教的な普通の日本人が友人の犯罪を制止できないと悩む道徳物語」のどっちかにハッキリ決めるべきだったのです。本当いうと、現代の男性観客に訴求するために最も良いのは、妹の犯罪にすることです。手塚の原作の時点で、少女のテロリストというタブーに挑戦すれば良かったのです。賀...

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1967年、石ノ森章太郎『ジュン 1』ポット出版

1967年、石ノ森章太郎『ジュン 1』ポット出版

これもポット出版の目録を見て取り寄せてみました。まさかのハードカバー。約340頁。物理的に重いです。A5版。漫画はこのくらいの大きさで読みたいものです。2011年9月、第一版第一刷。紙質が良く、印刷も美しいです。>本書は「COM」(虫プロ商事)1967年1月号~1969年2月号に連載された「章太郎のファンタジーワールド ジュン」を一冊にまとめた。だそうです。昭和42年度小学館漫画賞受賞作。作者は1938年1月生まれ。執筆...

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1992年、水木しげる『のんのんばあとオレ』第二巻

1992年、水木しげる『のんのんばあとオレ』第二巻

「ガキ大将は強いばっかりじゃいけん 小さい子も面白く遊ばせる才覚がなくっちゃみんなはついてこん」いいこと云うね、田舎の小学生。講談社コミックス、1992年10月第一刷。妖怪に好かれた落第王の巻。1970年代に描かれた『総員玉砕せよ!』のほうは、話法に荒いところがあって、じつはやや読みにくいのですが、こちらはコマ運びが滑らかです。作者70歳。境港の落第王における異世界への興味は、逃避的な趣味として好事家が妖怪絵...

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1973年、水木しげる『総員玉砕せよ!』

1973年、水木しげる『総員玉砕せよ!』

点描と掛け網の圧力。対照的に白っぽい人物が、軍隊生活と戦闘の意義の虚しさを象徴するかのようで印象に残ります。講談社文庫、1995年6月第1刷、2015年12月14日第28刷。密林に注文したら少し待たされまして、12月19日に「追悼 水木しげる先生」の帯が掛けられて届きました。「一体我々はなにしにこんなところで戦うのでしょうか」「そいつあわしにも分らんなあ」(p.209)戦争そのものには国防という善悪を超えた意義があるのか...

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