MISHA'S CASKET

1944年11月、山本嘉次郎『雷撃隊出動』東宝

貴様。早まるなよ。情報局国民映画。企画:大本営海軍報道部 後援:海軍省(海軍省検閲済第100号) 特殊技術監督:円谷英二空征かば散華する屍は永遠に弔わるべく、実際の英霊の勇気と、日本映画人の良心に万丈の尊敬を籠めて敬礼を送りましょう。(小旗を振るほうが庶民らしいかな)緻密かつ凄絶な航空戦描写は、時間にすると短いのですが、投入された特技・撮影・編集テクニックの数々と、俳優陣の気迫に圧倒されます。作中に...

1954年9月、木下恵介『二十四の瞳』松竹

ああ、意気地なしでもええ。誰にもほめてもらわんでもええ。製作:桑田良太郎 原作:壺井栄(光文社版) 脚色:木下恵介 撮影:楠田浩之 美術:中村公彦 録音:大野久男 照明:豊島良三 音楽:木下忠司 監督助手:川頭義郎昭和29年度芸術祭参加作品。文部省特選映画。優秀映画鑑賞会第一回特選作品。ハンカチーフのご用意はよろしゅうございますか?絵で語ることにかけては抜群のセンスを誇る木下さん。割烹着姿の婦人たち...

1961年4月、黒澤明『用心棒』東宝・黒沢プロ

俺を買わんか。製作:田中友幸・菊島隆三 脚本:菊島隆三・黒澤明 撮影:宮川一夫(大映) 美術:村木与四郎 録音:三上長七郎・下永尚 照明:石井長四郎 音楽:佐藤勝 監督助手:森谷司郎 剣道指導:杉野嘉男 剣技:久世竜 振付:金須宏買ったッと叫びたくなる口元を押さえつつ。西部劇ふうのBGMに乗って、弁当も持たんと懐手で一人歩きする三船敏郎、41歳。岡本喜八さんとこでは端役だったり主役だったり忙しかった...

1963年5月、古澤憲吾『青島要塞爆撃命令』東宝

飛行機も補給隊も、どちらか一方が失敗しても、この作戦は成り立たない。脚本:須崎勝弥 撮影:小泉福造 美術:北猛夫 録音:伴利也 照明:金子光男 音楽:松井八郎 特技監督:円谷英二1914年。難攻不落のビスマルク砲台。日本男児ここにあり。痛快無比の冒険活劇巨編。(予告篇より)こちらは1960年代の航空映画の金字塔と申してよいかもしれません。企画としては『ナヴァロンの要塞』(1961年)準拠でしょうが、撃墜した敵...

1965年4月、黒澤明『赤ひげ』東宝・黒澤プロ

不味い食べ物でも、よく噛んでおれば味がでてくる。製作:田中友幸・菊島隆三 原作:山本周五郎『赤ひげ診療譚』より 脚本:井手雅人・小国英雄・菊島隆三・黒澤明 撮影:中井朝一・斉藤孝雄 美術:村木与四郎 録音:渡会伴 照明:森弘充 音楽:佐藤勝 監督助手:森谷司郎 地球はめぐり、大気は動き、老いは逝き、若きは育つ。黒澤映画で印象的なのは、いつも風の音。たぶん諸行無常の象徴なのです。豪華キャストでお送り...

「同人はフェミとは別」なら、同人さんは黙っていて下さって結構です。

当方は、基本的にプロ作品のファンとして、その書評をするかたわら、一部の社会学者・評論家・書評者が「プロも自虐していた」という認識を前提に議論を構築しているのは間違いであると指摘しているものです。他人様のブログやお店の商品レビュー欄に書き込むと殴りこみになっちゃいますので、自分のブログで「中年の主張」してるってだけです。もし同人さんが「同人はフェミとは別だから、フェミが言ったことは同人とは関係ないの...

アダルトチルドレンは、言い訳になりません。

今、ここで、おとなになればいいのです。SNSにおいて他人の人権に配慮し、礼儀正しい言葉づかいを心がけることによって、おとなになればいいのです。若いゲイの将来に配慮して、新宿二丁目では自分が遠慮するということを通じて、おとなになればいいのです。愛情表現のつもりで他人に噛みつくことを我慢することによって、おとなになればいいのです。表面的に学術用語のようなものだけ覚えて、自分で自分にレッテルを貼って、自...

もう、ディープとライトの二項対立は無用です。

戦中はもちろん、戦後まもなくの実写映画は、記憶が新しかったので軍隊関係の描写がほぼ正確です。もちろん何事も鵜呑みにはしないのが最大の前提ですが。1970年代になると、漫画チックな誇張が混入してくることがあって、実写映画といえども信用できなくなって参ります。1990年代以降は、インターネットの普及により、情報交換が盛んになって、素人もだいぶ知識をつけました。その間の1980年代には、プロ小説家の作品といえども、...

日本のサブカルが田舎くさいというのはですね。

誰かが言ったことがタイムラインに乗って流れて来たもので、リツイートがなされたということは多くの人が同感したということですから(反感を持った人がさらした可能性もありますが)、最初に言ったのが誰かはもういいです。当方の目的は個人攻撃ではなく、発言内容そのものの批評です。前にも書いたんですが、もう一回書いてます。さて。まず「日本の」と言っている以上、比較の対象が海外です。ありていにいって、ビートルズやM...

妖怪「同人もどき」のしわざです。

ウスラカゲ族。学業に行き詰まりを感じている暇っぽい青年(女子の部を含む)に取りついて、漫画と小説を混同させ、二次創作で簡単にかせげると勘違いさせてしまう。妖怪不祥事案件で言うところの「一生アニパロ同人で食っていけるつもりだったから就職しなかったのに、人気が低下したのでアブハチ取らずになってしまい、生涯賃金を棒に振っちゃった件」を引き起こす恐ろしい妖怪。被害者の人数は確認されていませんが、1985年頃か...

同人活動を始めるのも辞めるのも、自己判断・自己責任です。

まず、ウィキペさんの「迷宮(同人サークル)」記事は、感動的な名文であって「奇跡の6年間」を懐かしむ人が書いているのです。少なくともそういう人が書いた文章を参考にしている。ただし、ファンクラブが増えたせいで間違いが起こったというふうに読めるので、もともと二次創作に反感を持っている人が読むと、敵愾心を強めるだろうなという危惧はあります。当方の危惧の背景には、すでに二次創作BLに反感を持つ男性によって、...

結婚しなくても母親もどきになることは出来てしまいます。

差別的な同人と表現規制大好きPTAは似ている、という本当にあった怖い話。まず、当方は1980年代の白泉社『花とゆめ』誌上で同時に連載されていた『ガラスの仮面』と『スケバン刑事』と『パタリロ!』を毎月2回読んでいたものです。左から順に、女流少女漫画・男流少女漫画・男流美少年漫画ですね。和田慎二というのは、ごく当たり前に少女読者に人気があったことと思いますが、いっぽうで早い時期から「ロリータ・コンプレック...

女性のビジネスを危険にさらしているのは誰ですか?

「BLはビジネスだからジェンダー論とか関係ないのよ」などとわざわざ言って来る人もあることですが、そのビジネスに女性が参加できることがすごいのです。女性の「ビジネス」が自らの肉体を売ることではないことがすごいのです。進駐軍の肝煎りで参政権を保障されても自分の名前も書けない女性がいた時代があったのです。十歳から子守りの「ねえや」として働き、十五で嫁に行き、十六で産後の肥立ちが悪くて亡くなってしまったと...

少女漫画の代償説は、論理的ではありません。

単純に、論理の問題です。いろいろな記事の中で言ってきたことですが、一度、手短に言っておきます。少女漫画が読めないからといって、BLが読めるとはかぎりません。世の中には性的な話題が全般に苦手で、ディズニープリンセスのハッピーエンドとしてのキスシーンも苦手で、BLも読めないという女性がいます。少女漫画が面白くないという人は、BLも読まなくてもいいのです。たとえばの話、蟹が食えないからといって、海老を食...

もう一つの「同人はフェミとは別」の意味。

まず、BLの母親トラウマ原因論も論理的ではありません。もし、二次創作BLファン全員が「私の場合、厳しい母親がトラウマになっているので、アニメキャラクターを無断利用せざるを得ない」と言うなら、母親を集めて再教育すれば、著作権問題がなくなることになってしまいます。旧式なBL論は、市販の中高生向け漫画雑誌によって二十四年組以来のプロ作品を鑑賞する少女と、とっくに成人していた二次創作同人を混同していたので...

1963年1月、松林宗恵・円谷英二『太平洋の翼』東宝

無理を言うぞ。最後まで生き抜いて戦ってくれ。製作:田中友幸・田実泰良 脚本:須崎勝弥 撮影:鈴木武 美術:北猛夫 録音:渡会伸 照明:石井長四郎 音楽:団伊玖磨 資料提供:新明和工業株式会社 特殊技術:有川貞昌・冨岡素敬 光学撮影:幸隆生・真野田幸雄・徳政義行 美術:渡辺明 照明:岸田九一郎 合成:向山宏空の青と海の青が観客の眼を洗うトーホースコープ。敵機が見えると、撃ち落としたくなりませんか?(...

もう、「女の子」だから許される時代ではないです。

まず、映画によって作られた「イメージ」を疑いましょう。どこまでもまっすぐに伸びる線路は魅力的な構図です。子どもが線路伝いにトボトボ歩くというのは印象的な場面です。往時の賑わいをしのばせる廃線は情緒深い話題です。だから「線路の中に人が入っている」という構図は時々あります。自分がその主人公になってみたいかもしれません。いっぽう、街なかに住んでいると「線路の中に入ってもいいかどうか考える」という機会は少...

1955年8月、木下恵介『遠い雲』松竹

姉ちゃんはそれだけでいいの? そうやって歳とってもいいの?製作:久保光三 脚本:木下恵介・松山善三 撮影:楠田浩之 美術:平高主計 録音:大野久男 照明:豊島良三 音楽:木下忠司 監督助手:大槻義一 協力:高山市もはや「戦後」ではなくなりつつあった頃。伝統と革新。貞節と純情。打算か? 恩愛か。小さな町の中に終始したお話であって、『二十四の瞳』の大作ぶりに較べると小粒ですが、そのぶんギュッと濃縮した...

大人になれないから仕方がないということは、ないです。

「男女の性交ができないからといって、男同士の性交について質問しない」と自分で決めればいいだけです。「職場で『未婚者、未婚者』といって侮辱されたからといって、自分より若い人を差別したり、人前で下半身の話をしたりしない」と自分で決めればいいだけです。「虐待の連鎖を自分のところで止める!」と自分で決めればいいだけです。すこし前まで、こういう考え方ができない人は、けっこういたのです。支配的だったと言っても...

女性は国民の過半数なので、じつは多数決上の強者なのです。

女性のほうが長生きなので、国民全体で見ると女性人口のほうが多いのです。けれども、国会・企業の重役会議など、意思決定機関内部においては男性のほうが多いので、国民の過半数を占める女性の意見が国政・営業戦略に反映されないという「ねじれ」現象が起きているのです。だから、女性が自分を第三身分とか、プロレタリア人民になぞらえて、新左翼っぽい気分になっちゃうこともあるのです。理系が苦手な人が多いので、なかなか爆...

差別用語を連発するアカウントは自分が目立ちたいだけです。

漫画家などが「江戸時代の障碍者が差別に負けずに立派な芸術家になった話を描こうとしているのでご理解ください。作中の台詞を削除しないでください」というのは、本人なりに良くよく考えた上で発言しているのです。それに便乗して、さっそく差別用語を連呼しはじめるというのでは、子どもがふざけているだけです。中年が子どものふりをして若く見せようとしているなら、二重三重の意味で不適切です。実際の身体障碍者が「何々と呼...

それは弱者同士の連帯ではなく、お客さんの甘えです。

ゲイというのは、ゲイとは自称したくない人も含めて、たんに異性に興味がないというよりは、同性に興味が「ある」人々なわけで、最終的には惚れた男と結婚したいのです。配偶者控除、手術の同意書への署名、保険金・遺産の受取人など、互いの人生の重大局面において責任者として行動することを法的に(=全国的に)保障されたいのです。いっぽう、女性というのは、男性よりも長生きなので、全国的な多数決としては強者です。だから...

女にもゲイにも自分の世界がある。

まず、女性の未婚者が「未婚者・未婚者といって侮辱」されない権利というのは確かにあります。それが損なわれる場合も多いです。また「産めないの?」などと揶揄されることもあります。さらに男性が「俺は独身女性の生活に興味がある。一人でいるとき何してるの? やっぱりBLやレディコミを読んで興奮してるの?」などと、質問を装った性的いやがらせすることもあるでしょう。それに対して女性が「余計なこと言わないでください...

1980年代の二次創作BL小説同人の勘違い(1)

「同人誌とはアニパロです!」と言っちゃうレベルの同人および同人誌即売会一般参加者における無根拠な優越感という話。まず「コミック」マーケットとは、その名の通り、漫画同人会の集合です。大学生・高校生による部活動の一種だった同人会が卒業とともに自然解散して、もともと熱心に描いていた者だけが、そのまま同人会を名乗って、同人雑誌の執筆・出展(=即売)を続けているということもあります。「看板作家=編集長」とい...

1980年代の二次創作BL小説同人の勘違い(2)

1969年初頭に連載開始した、わたなべまさこ『ガラスの城』が小学館漫画賞を受賞しておりますが、これは従来型の少女物語の行き着いた先のホラーまたはサスペンスですね。当時の少女は「怖いけど面白い」と思ったことでしょう。女子高生どうしのイジメは『青い山脈』にも描かれているとおりで、古いテーマです。吉屋信子の作品の要素の一つでもありますね。それが、ここまで来てしまった。少女が男性顔負けの権力を持てば、こういう...

山も落ちも意味もないのは、二次創作BLです。

「手塚治虫や石ノ森章太郎の愛弟子であり、きちんと彼らの言うことを聞いて、立派に山も落ちもある作品を制作した萩尾望都や竹宮恵子とちがって、我々の手がけたものは程度が低いので、お捨ておきください。ぶっちゃけた話、テレビ局に対する著作権問題をかかえているので、見つかるとやばいんです」これが同人側から自虐した真意です。それがやたらと注目されて、当の萩尾・竹宮と混同して論じられたのでは、自虐した意味がないの...

B級グルメとサブカル。

ラーメン食いながらジャンプ読むですよ。店主がそろえたコミックスを読破したくて焼きそば屋に通うですよ。インターネットがなかった時代、若者たちはそうやって時間を過ごし、自分を癒したのです。仕事がつまらねェと思ってる人もいたでしょう。勉強が分からねェと思ってる人もいたでしょう。サラリーマンも、ガテンもいたでしょう。東京都の隅っこから来た人もいたでしょう。地方でいちばんの都会から上京したら「ただの人」にな...

1951年11月、成瀬巳喜男『めし』東宝

結婚って、こんなことなの?製作:藤本真澄 原作:林芙美子(朝日新聞連載・出版) 監修:川端康成 脚色:井手俊郎・田中澄江 撮影:玉井正夫 美術:中古智 録音:藤好昌生 照明:西川鶴三 音楽:早坂文雄 監督助手:川西正義ここは、かろうじて植民地化も分割統治もされずに済んだ敗戦国です。「ごはん」という言葉が、白飯単品の謂であると同時に、食事という行動全体をも示す国です。1951年11月には、まだコメだけは自...

男同士をネタにはできても、連帯はできない。

女性が男性から性的に失礼なことを言われたと感じたとき、「あなたと寝たいっていう男もいるかもよ」とか、「あんたが自分でほかの男の嫁に行けばいいじゃん」とか言ってやることによって、一本取ってやった気分になることができるわけです。とくに、1970年代前半までの女性はそこまで言うことが(ほとんど)なかったので、1970年代後半以降は男性のほうで「女がすごいことを言うようになった。アプレゲールもここまで来たか」とい...

業界としての自由と、個人の自白は別なのです。

まず、有名キャラクターの似顔絵を描くと、自分がプロより下手であることが分かります。そこで「俺にゃ漫画家は無理だな」と諦める人は諦めるし、がんばって上手くなろうと思う人はがんばる。また『笑点』などを観ると分かるように、おなじお題で競作すると、各人の個性が分かります。そこで「俺はこういうのは向いてないな」と思えば他の仕事を探すわけですし、手ごたえをつかんだ人どうしでは、さらにセンスを磨こうという切磋琢...