1997年10月、池田敏春『鍵』東映東京

性欲を描かないで、人間は、描けないんだ。

製作:黒澤満・植村徹 原作:谷崎潤一郎 脚本:白鳥あかね・香川まさひと・池田敏春 音楽:本多俊之 撮影:前田米造 照明:加藤松作 美術:桑名忠之 編集:川島章正 助監督:中嶋竹彦 

ドザッパーンと始まる谷崎潤一郎。東映だってやれば出来ます成人向け。

丁寧なロケ地選択、華麗な洋風背景美術、執拗に繰り返される主題曲、クローズアップの多い1990年代的話法で堂々の耽美派芸術路線。

思いがけないファーストシーンからして印象的。クルボアジェを(以下略)

何よりも川島なお美の美しさを世界に誇りたい映画で、美しすぎる嫁さんの前でオロオロする夫の愛嬌も、初めて表現し得たかもしれません。

ニュース音声、流行曲、劇中劇、サイドカーつきオートバイ。撮影時点と劇中時点(原作は1961年発表)のズレが大きくなってくると、こういう小道具が必要で、それがまた魅力です。ただし……

神代版は登場人物の年齢設定が原作に忠実で、女優の風貌も万人向けの美人じゃないですから、夫の執拗さが余人には共感しにくく、かえって夫婦の深み・おとなの性の凄みを垣間見せてくれたので、むしろ芸術だったわけですが。

こっちはサスペンス性が強くなってしまったかもしれません。うっかりするとテレビサイズになってしまうところ、1990年代らしいフェチっぽい映像で押し通すことによって救いました。

脚本の白鳥は名前からいって婦人と思われますが、嫁さんが洗濯物を乾していたり、お手伝いさんに明るさがある点に、それが表れているのかもしれません。

ただ最後にね……ああ、女は余計なこと言っちまうんだよなぁみたいなところはあります。

そして何回観ても読んでも、来客中に風呂に入っちゃうことだけは不思議なんだけれども、これも言わない約束。



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