演能中の私語は慎みましょう。

「これだから若い人がテレビにつられて見に来ると困る」という話だと勘違いされると困るので、あえて申し上げておきます。中高年のほうが態度が悪いです。

シテが留め拍子の体勢に入って、後座が最後の一音を打ち切るまでが重要なんだから、もう終わりだと思って気を抜かないでくださいませ。ご自宅でテレビを観てるのとは違うのです。

自分より年下の役者たちが修行の成果を披露してるんですから、聴いてやってください。困難を承知で伝統芸能を選んだ人々です。

家業を継ぐことを幕府によって命令されているわけでもない時代に、みずから継承の責任を負った人々です。

【お能は予習していいです】

映画は予習すると「ネタバレ」になってしまって感興を削がれますが、能楽は予習してから行くといいです。

ミュージカルの一種なわけですが、歌詞(詞章)が古い言葉なので耳慣れないことが多く、ぶっつけ本番では聞き取ることがむずかしいです。

装束も所作も写実的ではないと言いつつ、演技者はちゃんと感情のこもったお芝居してるので、話が分かって観ると、ちゃんと共感して泣けます。

大河ドラマをきっかけに平安文学に親しんだ方も多いかと存じますが、そこから能楽の時代へくだって来ると、どっかで聞いたような和歌・漢詩の引用に接して、親近感が湧きます。

逆にいうと、なにも予習してこなかった人が「なに言ってるかわからなかった」と他人の責任のように言うのは控えましょう。

ロビーで言ってることが楽屋にいるお役者に聞こえることはありませんし、彼らとしても今さらでしょうが、それだけでは自分自身の進歩がありません。

おもてなしの心ってのは、宗教的戒律に触れない食事を提供することを心がけるように、他人のルールを自分が身につけるということでもあります。

こっちからカネ払って観に行くんだけど、それは自分の心の中に演者を迎えるということでもあるのです。

お目汚し失礼いたしました。お心に留めてくだされば幸いに存じます。


Related Entries