「やおいは二十四年組から始まった」というのは、嘘です。

二十四年組は、若い後輩たちに「アニメの権利を侵害しなさい」なんて教えていません。

他人が創出したキャラクターの有名性を無断利用して、オリジナルストーリーの付加価値を高めるという技法を思いつき、制作し、出展・販売したのは、アマチュアが勝手にやったことです。

したがって「女流漫画家が男同士を描いてBLと称することの元祖は二十四年組だが、やおいと呼ばれた二次創作BLの責任は二十四年組にはない」が正解です。

1980年代後半以来、BLに関する議論が混乱しやすかったのは、プロとアマチュア、オリジナル作品と二次創作を全部まとめて「やおい」と呼んでいたからです。

議論している人々が、いま何の話をしているのか、誰の責任を問うているのか、合意ができていないことが多かったのです。

【隠語の本義】

「やおい」という言葉は、「アニパロ」の言い換えであり、二次創作BLがはらむ著作権問題を世間様から隠蔽するために使われた隠語であって、アマチュア限定の業界用語です。

だから1970年代以来1984年頃までのベテラン同人なら「二十四年組も『やおい』の仲間よ」と言うことは絶対にありません。

そんな有名なプロと混同されて、自分たちまで注目されてしまったら、著作権者さまにバレたら、著作者人格権を行使されたら、ジャンルが滅亡したら、損害賠償金を請求されたら、せっかく自虐した意味がないのです。死活問題です。

【爆弾】

漫画同人がプロ漫画を題材にしてパロディを描くことは自然です。

もともと漫画というのは社会諷刺を身上とするものであり、世上で流行しているものを何でもすぐに取り入れて揶揄するものです。

それが1970年代におけるSFアニメの流行に目をつけたというのも正しいです。けれども、その著作権問題にはテレビ局・映画会社が関わることになります。ということは、番組スポンサーも関わることになります。

もし、番組スポンサーが「降りる」といったら、テレビ局は大損害です。同人たちは見つかるわけに行かなかったのです。

最初は誰かが、ほんとうにジョークのつもりで出展したのです。いちばん最初に思いついて、自宅でコツコツ描いている時点では、必ず売れるという保障がないからです。

けれども予想外の評判となって、我も我もと模倣が発生してしまった。その時に同人界は爆弾かかえちまったのです。

【中学生の時代】

1983年頃から、漫画原作アニメの二次創作同人誌を目当てに中学生がイベント会場に来場し、おねえさんたちの真似して出展することが急増してしまいました。

この現象を「少女が従来の少女性を放棄して少年漫画およびアニメの鑑賞に目覚めた」と捉えれば、ちょうどフェミニズムの隆盛期だったので、社会学としては収まりがいいんですが……

だったら普通に商業誌を読んでりゃいいだけのことで、同人誌に関わる必要はありません。

じつは最初の時点で(すでに1970年代以来の同人が成人し、技量としてもベテランになっていたので)ひじょうにうまい二次創作同人誌があって「このジャンルの二次創作は面白い」という評判が立ち、それが先入観となって広まったものだろうと思います。

その証拠を挙げることは当方の本意ではありません。同人にも著作者人格権があります。作品の公開範囲を自分で決定することができます。

同人の自発によって同人誌即売会に販路を限定し、ゾーニングを確保しているものを、他人が明かしてしまうことは、法律違反です。したがって、論理的帰結として「それが最も自然だ」と指摘するに留めます。

でも、後発の中学生たちは、ほんとうに著作権の「ちょ」の字も知りませんでした。したがって同人だけが自虐する意味が分かっておりませんから、プロとの混同を発生させたのです。

【デマ】

個人的経験として、1985年頃に、その種の同人誌に興味がなく、即売会へも行ったことがないという人が、二十四年組作品をゆびさして「こういうの『やおい』って言うんでしょ」と発言したので愕然とさせられたものです。

出版社がプロ作品を売り出すにあたって、その単語を用いたことは絶対にありません。

大枚はたいてプロ創作家から出版権の設定を受けた出版社が、なにが悲しくて「山も落ちもない駄作だから読まないでください」なんて自虐しながら売り出さにゃいかんのですか。

それは絶対にありません。当時の単行本の帯などの証拠物件によっても確認することができます。

だから、そういう人は自分で商業誌を読んでいる時にその単語を知ったのではないのです。

また別の人が「同人誌即売会ってゆぅところへ行ってきた」といって、同級生に向かって教えてやるとかいって、プロ漫画を示して「こおゆぅのやおいってゆぅのよ~~」というデマを広めたのです。

誰ですかそういう「にわか」さんは。


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