1972年1月『荒野の素浪人』NET、三船プロ

そんな世の中に、俺も旦那も生きてるんだからな。

【第1話:乱闘 辰の上刻】 監督:村山三男 殺陣:久世竜 脚本:津田幸夫 音楽:菊池俊輔 撮影:山田一夫 美術:高山彦三郎 録音:大野久男 照明:土井直之 編集:阿良木佳弘 効果:東宝効果集団

【第2話:奪回 佐渡無宿人】監督:松森健 殺陣:宇仁貫三 脚本:池田一朗 撮影:斉藤孝雄 美術:植田寛 録音:藤繩正一 照明:佐藤幸郎

【第3話:必殺 帰らざる街道】監督:松森健 殺陣:久世竜 脚本:松浦健郎 撮影:斉藤孝雄 美術:植田寛 録音:藤繩正一 照明:佐藤幸郎

【第4話:狙撃 関八州取り締まり】監督:西山正輝 脚本:池田一朗 撮影:佐藤正 美術:石田良之 

巻き込まれ型めんどくさがり二本差しヒーロー。風の吹くまま気の向くまま。袖ふりあうも他生の縁。

1970年代テレビ時代劇の気合い充実ぶりを堪能しましょう。各回とも「90分映画をダイジェストでお送り致します!」というべき密度の濃さ。スタッフの本気が漲っております。

三十郎より三倍強いから九十郎というパロディ企画なんですが、強風とともに黒澤リスペクト魂もみなぎっております。単体でも楽しめますが、映画を観てからのほうが、やっぱり感慨深いです。

なお、当ブログでは「最近観たテレビ番組」という話題ではなく、DVD第1巻の鑑賞記なので「映画」カテゴリにてお送り致します。

『用心棒』からは約十年が経過しているわけで、キャラクター消費のサイクルが今より長かったというべきか。けれども、現代でも二十年以上続くドラマ(アニメ)が存在することを思うと、作り続けることって大事です。

映画産業が縮小した後、その全盛期を知っている俳優たちによる個人プロダクションが技術と心意気を守った功績は計り知れず大きいと存じます。

そんな志を胸の芯に燃やしつつ、学生運動もひと段落した1970年代の男の美学はニヒリズムだったようで、お話はシビアかつドライですが、観客を微笑させるツボもよく心得ているようです。画面の外から声が飛んでくるという、おもしろい演出もございます。

じつは坂上二郎のコメディアンぶりを堪能できる作品でもあって、その中年コメディリリーフに対する主役は五十の大台に乗った三船のたたずまいをナチュラルに活かしておりますから、画面が渋くて渋くてどーしよーもないです。

ので、共演者・大出俊の軽さが良い抜け感をもたらしております。大出自身が楽しそうに演じておりますね。三船はリアルで憧れの大スターだったのでしょう。よく考えるまでもなく、大菩薩とは峠つながり。

だからなぜタイトルにしなかったと言いたいくらい「峠」というモチーフを重視して、毎回凝った物語です。

第1話は山田カメラが「ちょっと落ち着け」と言ってやりたくなるくらい意欲的です。個人的には第3話の出来がいいと思います。第4話は時代劇にあるまじき価値観を拝聴することができます。各回ごとに脚本に明確な主張があるところがいいです。

男装の女子キャラクターも時々登場して目に楽しいです。確か勝プロ『無宿』にも出ていた梶芽衣子は、藤純子などのおとなっぽさに較べて、ガーリッシュとボーイッシュのちょうど中間に位置する魅力をもった新時代の象徴だったのでしょう。

やや大胆な編集は、漫画の勢いが強くなったことを反映しているようにも思われます。ときどき派手な場面もあって、まだまだがんばれ東宝効果集団。以下続刊。

そして浪人は、今日もまた風の中を、新たな峠を越えて行くのである。


関連記事