1963年1月、井上和男『無宿人別帳』松竹

どうやらここが死に場所だぜ。

原作:松本清張 脚本:小國英雄・井上和男 撮影:堂脇博 美術:芳野尹孝 音楽:池田正義 殺陣:二階堂武

江戸期日本経済の底の底。権力と財力とド根性。どこに男の夢がある。脚本家の名前に期待しつつ。

松竹の面目。冒頭から意欲的なカメラワークと「やってるやってる」と言いたくなる編集、異様なロケーション、破格のセット。日本のフィルムノワールは本当にとんがっていました。能舞台まで建てちゃったんですか……。

映画が観客動員数最高をマークしたのは1958年で、黒澤『隠し砦の三悪人』が公開された年です。その後、右肩下がりが続いて、この当時にはオリンピック前年ですから、カラーテレビが普及しつつあったはず。勝負かけたと言えるのでしょう。

無宿人というのは、江戸時代の人が地元でやらかすと、家族・親類縁者が連座させられないように戸籍から除名したんだそうです。本人が勝手に出るんじゃなくて、家族のほうで「縁を切ったことにさせてください」って役所に届けるのです。

すると、まともな就職できませんから、博徒(つまり、ゲームでかせごうとするプー太郎)になったわけですが、時々「八州さま」の手入れが入って、とっつかまると、やたらせまい唐丸籠につっこまれて、佐渡金山へ送られたのです。

と、先日『峠の』じゃなくて『荒野の素浪人』で言ってました。小伝馬町の話題からも離れられません。なお『用心棒』は、この前年ですね。無精ひげ時代劇が流行っていたとも言えるのかもしれません。(武士はきれいに髭を当たり、もみあげも伸ばさないのが本来の作法だそうです)

で、本編は、俳優の個性を反映した大勢の登場人物が生き生きと活躍する群像劇。エピソード盛りだくさんでたいへん面白いので、むしろあらすじは申し上げられません。長編を端折ったことは明らかですが、徐々に焦点が絞り込まれていく流れが見事です。さすが小國さんとか言ってみる。

長門裕之の器用さがよく分かります。惜しくも晩年となってしまった佐田啓二の珍しい体当たり演技も見られます。

ラストは現代女性にとっては納得しにくいかもしれません。結婚を描き続けた松竹の看板監督・小津安二郎は、この年の12月に惜しまれつつ旅立ちました。井上和男は、映画作品そのままの勢いと男気のある人だったようです。

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