1973年8月、山本薩夫『戦争と人間 完結篇』日活

いったい、国ってなんだ?

原作:五味川純平 脚本:武田敦・山田信夫 撮影:姫田真佐久 照明:熊谷秀夫 録音:古山恒夫 美術:横尾嘉良・大村武 編集:鈴木晄 音楽:佐藤勝 助監督:岡本孝二・後藤俊夫 軍事指導:木島一郎 協力監督:河崎保、ニキタ・オルロフ

ここはお国を何百里。徐州、徐州と人馬は進み、戦争ってのは太平洋方面だけじゃなかったんだぜと三たび叫ぶ日活と薩夫。187分。

大映すでになく、東映任侠道も盛りを過ぎて、東宝・日活とも満身創痍。日本映画界そのものの屋台骨が揺らいでいた時代に、よくぞ撮ってくださいました。

日中国交正常化の頃なので、興行的な意味でもタイムリーだったとはいえ、これを発禁にして幻の名作ということにしてしまわない戦後の日本は、やっぱりいい国です。

忘れてはならぬことがある。語り継がねばならぬことがある。

日活自体は、だいぶつらいことになっちゃってるので、前半はあまり大掛かりなセットを使わずに工夫して撮った様子は見られます。そのぶん台詞劇としての効果がMAX。俳優たちの技量にも感嘆させられます。

記録フィルムの使用が増えたのも印象的で、撮影の手間をはしょって間をもたせるための工夫でもあるとは思われますが、やはり厳粛な緊迫感が高まります。

大陸のお友達とはご一緒に観られないかもしれない描写も増えて参ります。日本側におけるインテリイジメのリアリズムも経験した人でなければ書けない(撮れない)かもしれません。兵隊さんはカワイソウダナー。マタ寝テ泣クノカヨーー……。

映画のヒットからいって、この軍部描写の影響は大きかったでしょう。この後、関東軍の内実を暴露する的な書籍が相次いだように思います。

特殊効果は集中的に投入しました。CGではありません。やっぱり映画ですから、台詞が掻き立てる情感と、画面の迫力と、その組み合わせ(編集)の如何が重要です。欣也は大活躍。白戸家のお父さんにも若い頃があったのです。

なお、伍代家のお父さんの背景に見られるアールデコ等の西欧的様式美も、やっぱり魅力です。

戦前の財閥暮らしを描いた映画は多くはなく、アニメが隆盛したのはこの直後ですから、現代のミステリーアニメに至るまで、ステレオタイプを数多く提供したように思われます。

そして、これと合わせて松竹の木下恵介を観ておくことと、東宝の英雄譚と、東映のセンチメンタリズムを観ておくことも、やっぱり意義があることだろうと思います。日本人は、いろいろなもので出来てます。


(参考:野村芳太郎『拝啓天皇陛下様』)


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