武士の世とは、現代の視聴者にとって何なのか?

2012年度NHK大河ドラマ『平清盛』論ですが、古い作品の欠点をあげつらうのは新作につなげるためです。反省だけなら猿でもできる。重要なのは、あやまちをくりかえさないことです。

さて。ドラマの中心でくりかえし叫ばれたのが「武士の世」というフレーズ。主人公はそれを言うことによって、一族郎党の内部対立を鎮め、結束を固めたつもりです。

けれども、彼は所領経営をめんどくさがり、数字を確認することを怠る人物で、盟友・信西を見習って勉強するという謙虚さを持ち合わせていませんでした。

集団の成員どうしの話し合いを禁じ、リーダーの意見への同調を強要し、精神論を優先して数字を無視することは、旧日本軍最大の欠点です。

旧日本軍の指導者は、全員ではありませんが、士族です。つまり、この国では1945年8月15日正午まで「武士の世」が続いていたのです。

その武士道精神が玉砕と特攻を美化して将兵に強要し、都市部の庶民にも疎開を許さず、空襲による人的被害を増大させたことは、すでに証明されているといっていいでしょう。

その同調圧力は、いまなお企業において、スポーツ指導の場において、競争に勝つという大義名分を優先して、集団の成員個人の人権を蹂躙することを正当化し続けていると言えるでしょう。

それをいやがる現代の若者たちが、いまから武士の世を打ち立てようという話に感情移入できるわけはなかったのです。


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