プロ創作家から「やおい」というレッテルを削除してください。

副題:なぜ、二十四年組が二次創作の責任者にされているのですか?

もともと、ここの同人・BL論は「日本の漫画道のプロフェッショナル中のプロフェッショナルである二十四年組がアマチュア二次創作と混同されているのはおかしい」と指摘することが大きな目的の一つです。

が、主旨を勘違いして「同人のことなら私のほうが詳しいわ!」という人が来ちゃったので、話がややこしくなったものです。ので、今回は、初心に返って、プロの名誉回復というお話をいたします。

【プロと同人は別】

二十四年組というのは、1949年(昭和二十四年)頃に生まれたという意味で、高校を卒業する頃に漫画家デビューした日本女性の一群を指します。

とくに団体を結成したとか、共同執筆したというわけではないですが、仲が良かったので、ユニットのように称されるのです。文学史の何々派というようなものです。

で、彼女たちが、1970年代に入ると、女の子ではなく、女の子みたいに可愛い顔した男の子を主人公にした漫画を立て続けに発表しました。もともと少女漫画に出てくる男の子は女性的な顔立ちをしているものですが、ヒロインの相手役としてではなく、本人が主人公で、また別の男の子と喧嘩したり仲良くなったりする様子を描いたのです。

これが、現行の「ボーイズラブ」の源流ということになっています。

ただし、昔はボーイズラブという言葉がなかったので「やおい」という言葉で総称しました。ただし、これが間違いなのです。

もともと、美少年が登場する物語は、戦前(生まれ)の男性が書いていたもので、耽美派文学の一種と思われていました。だから女性が描いた漫画も「耽美」と呼ばれました。女性の小説家も似たようなお話を書くことがあって、これも「耽美」の名前で市販されました。

いっぽう「やおい」というのは、アマチュア(=同人)が使った言葉で、もともとは手塚治虫がいった「山場も落ちも意味もないお話なんか描いちゃいかんよ」という注意を、パロディにしたものです。

つまり「私たちが描いたのは山も落ちも意味もない(けど面白い)」という冗談だったのです。これが縮まって「や・お・い」になったというのが定説です。

で、同人としては「そういう私たちと、手塚治虫や石ノ森章太郎の直弟子である二十四年組ではレベルが違う」ということを、わきまえていました。

すでにみ~~んな知っていることなので言っちゃいますが、それは本当に下手だからという意味ではなくて、同人が描いていたものは著作権問題をかかえていたので、プロと同レベルのすばらしい作品だと思われて、一般読者やマスメディアに注目されるようじゃ困るのです。だから自分たちだけ自虐したのです。

なのに、谷崎潤一郎などの男性作家と区別して「女性が描いた男の子のお話」だけを特定する単語がなかったので、プロの作品まで「やおい」と呼ぶことが増えてしまいました。1980年代の中学生が混同したのが始まりです。

で、1990年代になると、1980年代に中学生だった人々が成人したので、その一部がわざわざゲイバーまで行って、実在の性的マイノリティに向かって失礼なことを言うという事件が続発しました。

で、日本のゲイコミュニティが「やおいには困る」といってクレームしたんですけれども、そのクレーム文書を受け取った日本の学者である成人女性たちは、なぜかプロ漫画家やプロ小説家に「なんであんなもの書いたんですか」とインタビューしたり、なぜ私たちは男の子のお話を読む必要があったのか、と自分の少女時代の思い出話をするようになってしまいました。

けれども、ゲイのほうでは、事前に話を煮詰めてあって「プロ漫画家が描いたものがアマチュアに影響を与えて、アマチュアたちが換骨奪胎した形で流行させたものが、子どもに悪影響を与えている」と的確に指摘しました。

つまり、彼らとしても「プロのことは『やおい』とは呼ばない」ということを分かっていたのです。

しかも、すでにその時点で「ボーイズラブ」という総称が商業的に使われ始めていました。

けれども、社会のことをよく分かっているはずの社会学者や評論家が、あわてふためいてしまったのです。そして「プロでさえ、山も落ちも意味もないものを描いたといって自虐していた」という話にしてしまいました。

そこから「女性がそうやって自虐しなければならないのは、男性が女性を差別するからなので、差別しないでください」という女性の権利運動につなげて行ったのです。

その結果、女性はゲイコミュニティからの苦情を気にせずに、好きなように書いて発行することを続けてよいということになったので、少し前まで年齢制限さえされていなかったのです。

だから、フェミニストたちが「やおいは私たちのものです!」といって自己弁護の論陣を張ったのは、BL全体の発展のためには良かったんですが、プロは濡れ衣を着せられてしまいました。

精魂こめて、小学館漫画賞を受賞するほどの傑作を描いた人々が「くだらないものを描いてごめんなさい♪」といって、自分をも読者をもバカにしていたという濡れ衣です。

また、二次創作BLという物も、プロ漫画家の責任ではありません。

1970年代以来、可愛い男の子のお話を描いて、女性読者に少女漫画とはまたちがった面白さを提供してくれたのはプロの功績ですが、他人の作品を無断で利用したのは、同人たちの勝手です。

その同人たちを「でも面白いし、実在の子どもを傷つけるというほど悪いことではないので、あまり厳しく追及しないでやってください」といって弁護することは可能です。

けれども、プロと混同していいことではありません。万が一裁判になった時にも「男の子の話である」ことと「他人の著作権を利用している」ことでは、意味が違います。

だから、ここのブログ管理人は「プロに間違って自虐していたという意味のレッテルが貼られているが、それはやめてほしい」と思っています。プロ自身や、プロ作品を紹介する文章から「やおい」という単語を削除してほしいと思っています。

また「やおいは二十四年組から始まった」といった文章も訂正してほしいと思っています。

プロは自虐していません。一生懸命描きました。外国の文学も読みました。外国の歴史も調べました。音楽についても調べました。建築物や服装も調べて、正しく描きました。

もし若いあなたが、40年前の作品群を、まだ知らなかったら、心静かに読んでみて、再評価してあげてください。プロは自虐していません。まちがえたのは1980年代の中学生と1990年代の社会学者です。

そして、若いあなたも、自分の創作活動を頑張ってください。一生懸命描いたものを自虐する必要はありません。読んでくださる読者さまに対しても失礼なことです。「どうせ、どうせ」といって傷つけ合い、馴れ合うことを、そろそろやめにしましょう。

【ご協力願い】

あらためまして、プロ漫画家・小説家自身、およびその作品を紹介する文章から「やおい」というレッテルを削除してください。

可能なら「やおいと呼ばれた時期もあるが間違いである」という、ただし書きの形を取ってください。

また「やおいは二十四年組から始まった」といった文章の訂正を望みます。

こういうことは、かえってジョークのネタになってしまう・やぶ蛇ということがあって、言い出しにくいものです。だからハッキリ言う人もあんまりいないのです。

けれども、紫綬褒章受賞者をふくむプロ創作家たちの名誉回復のために、ご理解・ご協力を賜りますよう、ひらにお願い申し上げます。


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