1945年2月、溝口健二『名刀美女丸』松竹京都

この仕事場を捨てるな。

これちょっと面白いですよ。溝口流撮影術フルスロットル。ドワーフをも驚嘆させる日本刀は、このようにして作られます。小狐コンコンが手伝ったのが小狐丸だから……。

戦時中にこれを撮っていた健二の度胸が頼もしいです。当然ながら、エキストラには若い男性がおりません。

もう明らかに製作費もないのでございます。オープンセットも建てられない(空襲されても困るし)ので、スタジオ内で粛々と撮ってるのでございます。しかしスタッフはベテランがそろっていたようで、夜空の星も再現しちゃいました。

かろうじて使用できる伝統的建築物の美観を活かした構図の深みも、まごうかたなく溝口流です。

DVD特典では新藤兼人の溝口への傾倒ぶりが分かって、それはそれで微笑ましいですが、じつは溝口はここでもやりたいことをやっていたと思います。

妹の力ではなく姉の力を感じることの多い監督ですが、歯に衣着せぬ台詞を言うことができれば言っちゃう人ですから、国威発揚映画しか撮れない折から、もう本当に考えて考えて、アイディアをふりしぼって、できる範囲でベストを尽くしたのです。

だって、ヒロインの最後の台詞は、当時のすべての女性が感じていた悲しみの裏返しのはずです。そう考えると、時局に対する痛烈な批判なのです。

なお「武家の式楽」であるところの『小鍛治』の謡も、ちょっと聞けます。