なぜ、二次創作BL界隈は騒がしかったのか?

2010年代前半、ここの管理人は「なぜBL界隈はいつも騒がしいのか」という質問を頂いたことがあって、たいへん困っちゃいました。

なぜなら、その当時、本当に騒がしかったのはBL界隈ではなく、二次創作BL界隈だったからです。


1.名付けられざるもの


その時点では、「二次創作」という単語は一般化しつつあったのですが、まだ「にじそーさくびーえる」と続けて言ってしまう用法が確立していませんでした。

だから、排他的にそれだけを示す単語が存在せず、「BL」または「やおい」または「腐向け」という流行語または隠語によって、プロ作品と混同されていたのです。しかも「TPPどーすんの」という議論の真っ最中。

その状況下で「いや~、じつはBLの中でも二次創作っていうタイプがあって~、それが問題視されやすいんですよ~」とか「二次創作っていうものの中でも、BLのタイプが問題視されやすいんですよ~」とか言っちまっていいものかどうか、それはそれは困りました。

しかも、一方には「せっかく書いたのに山も落ちも意味もないなんて言われたくない」という声や、「BLといえば性的な作品に限るという偏見には困る」という声も挙がっていました。

よって、いろいろと混同されている現状に気づいてほしいと願って「プロは自虐していません。二十四年組は手塚治虫の教えをちゃんと守りました」という話を始めました。

が、そもそも、なぜ二次創作BL界隈は騒がしかったのか?

2.TPPという黒船


2010年代前半、日本のプロ創作家・企業が「二次創作」というものの許可を出すことが相次ぎました。

これは事実上、TPPによる同人活動の規制、ひいては日本のマンガ文化全体がアメリカの介入によって焦土と化すという、予想される事態に対する抵抗運動でした。

それ自体は個々の著作権者の判断であり、自由意志であり、権利だからいいんですが、他との連携が未熟だったので、オンライン検索結果画面やブログランキング等が似たようなアマチュア作品で埋め尽くされてしまうという現象を引き起こし、一般ユーザーから強い抗議の声が挙がったのです。

そのタイミングが、日本におけるSNSそのものの普及・モバイルそのものの普及のタイミングと完全に一致したので、混乱が加速しました。

約40年の伝統を誇る「同人誌即売会」という実在イベントであれば、会場という形で物理的に一般社会とは隔絶していますから、その中で何が流行ろうが、一般人がイラッとすることはなかったのです。が、すでにインターネットの時代だったわけです。

1980年代以来、日本の漫画・アニメファンは「オタク」という通称でひとくくりにされて来たので誤解されがちですが、じつは男女を問わず、一般公開されている映画・テレビ番組・商業誌掲載作品をふつうに鑑賞することが好きなだけで、それ以外の表現があるとは思ってもみなかったという人のほうが多かったわけです。

だから検索結果として唐突に表示された特徴的表現に対して、反射的な嫌悪感や初歩的な疑問を表明したのでした。その中には実在LGBTによる抗議も含まれていました。

そして、それらに対して「許可ならある!」と思う人々が、人格攻撃をともなう揶揄的・挑発的な口調で逆クレームするという、日本のサブカル同人活動史上前代未聞の異常事態となったのです。

3.女子と男子とLGBT


1980年代初頭以来、日本の同性指向男性たちは、創作物によって同性愛に対する偏見を持ってしまったシス女性に付きまとわれたり、セクハラ発言されたりするという基本的人権被害を受けて来ました。

そういうストーカー女子は、もともとシス・ストレート女性を刺激するように描写された創作物と同じように刺激的な話を、実在の異性の口から生で聞かせてもらえるものと思い込んで、すでに興奮してしまっているので、言動が病的なのです。

ゲイ側は、昔はその迷惑を訴える場所がなかったのですが、海外ゲイリブ運動の進捗を反映して、彼ら自身が臆することなく同性愛者であることを明かした上でSNSアカウントを開設する時代になると、わりと小まめにBL全体に対して苦情・要望を言うようになりました。「偏見を助長するような表現をやめてくれ。我々のために正しい知識を普及することに協力してくれ」って。

一方、女性側からは「シス・ストレート男性がBLに偏見を持っていて、女性に付きまとったり、からかったり、怪我させたりする」という深刻な被害報告が挙げられていました。

「ゲイに付きまとってやったら御礼参りされた」という被害報告はなかったので、被害と加害の関係が三つ巴になっているわけですが、いずれにしても、TPPをきっかけに「二次創作」や「同人」といった存在の露出が急に増えたことが、トラブル発生の大きな原因になっていたのです。

ここの同人・BL論は、すべてこれを背景にしています。


(アイキャッチ画像の六色虹 from イラスト素材:パンコス http://www.pancos-sozai.com/)

関連記事