自立支援の時代には、PTSDだからといって他人の著作権を侵害していいことにはならない。

障がい者自立支援法が施行されたのは2006年です。

逆に言えば、1980年代・90年代には「自立支援」という発想が定着していなかったので、いわゆる二次創作BLを手がけるアマチュア創作家や、その弁護人を自負する社会学者などが「こういう作品を好む少女は自分の母親がトラウマになっている」と言えば、あらゆる権利侵害を免責されるかのように思い込むことができたのです。

が、自立支援という発想が定着した現代では、もしアマチュア創作家が「母親によるPTSDのせいで他人の著作権を侵害せざるを得ない」というなら、社会は彼女がそのようなことをしなくても自立して暮らして行くことができるように、職業訓練を施すのが義務となります。

再犯の可能性がある者を放置せずに、再犯しなくてもいいように、必要な支援を与える。それが本人の基本的人権を尊重するということです。これが現代の常識。

もし、アマチュア創作家が「い、いや、他の職業訓練など必要ないです。私は健常な成人ですから、社会のルールとマナーを守った上で、創作によって充分に自立できています」と主張するようなら、二次創作の原作の著作権者に対して、なんと申し開きするのか。他人の著作権を尊重しましょうと定めた国法を何と心得るのか。

また、実在LGBTコミュニティから、すでに「表現が差別的である。街頭における暴言などの実際の差別行為の誘因になっている」という苦情が挙がっていることに対して、なんと答えるのか。

成人として、社会人として、有権者として、自分なりの意見を持たなければなりません。

国民には、自分に不利な証言をしなくてよい権利もあるので、べつに意見を持ったからといって即座に発表しなくてもいいです。また有権者である以上は「むしろ法律のほうを自分に有利なように変えてもらう」という権利もあります。

ただし、それが認められるためには、多くの国民と政治家を納得させるだけの材料をそろえ、言葉と礼儀を尽くさなければなりません。

だから、上記のように厳しいことを言われたからといって「規制派が来た!」と思って慌てなくていいんですが、常日頃から「自分ならどう言うか」と考えておいて、心構えしておくのがいいです。(頭の体操にもなるので、創作にも役立ちます)

同人が精神分析を押しつけられたくないなら、どういうことになるのか


本稿は、ある二次創作BL同人さんが「私たちはフェミとは別。精神分析を押しつけられたくない」と発言したことに基づいています。

本人は、1990年代のフェミニストたちが、当時は「やおい」と呼ばれていた二次創作BLを議論や論文のネタにしたことを、お節介に感じているのです。

同人の中には、1980年代後半以降、学者・マスメディアが同人活動に興味を持ったことによって、それがPTAや二次創作の原作の著作権者の目に留まりやすくなり、規制や差し止めの対象になりやすくなってしまったことに恨みを持っている人がいるのです。

上記の人は、特に「BLを好む少女は自分の母親に感情移入できず、人生のお手本にすることができないので、女性として正常に発育できない」という理論に反感を示して、精神分析無用と言ったのです。

「だったら、どういうことになるのか分かってる?」というのが、本稿です。

あの時代に、フェミニストたちが「少女が自分の母親に感情移入できないのは、母親自身が男性によって抑圧され、家事ばかり担当させられているからだ。少女が創作によって自立したいという気持ちを尊重し、絶対に発禁処分などにしてはいけない」という見事な逆転の発想を主張したから、BLは発行禁止や年齢制限を免れて市場を拡大し続けて来たのです。

そのことについて、フェミニストに恩を感じることができないなら、自分で自分を何と言って弁護するのか。大事なことなので二度言いますが、あわてて自己主張しなくてもいいですけれども、本当に自己主張が必要な時になってからあわてることのないように、よく考えておきましょう。

特にバブル時代の同人さんは、自分が中高生だった時代に、すでに成人していたサークルの先輩たちが「私たちはフェミとは別よ(自重しなさい)」と言ったことの意味を勘違いしていて、底の浅いことを言ってしまって、かえって自分の深い墓穴になるということがあります。

実際には、女性が男性の最もいやがる話題で出版し、それを売ることによって自立できるという、まさにそのことこそ、女性の権利が最大限に保障されていることの証であり、女性の人生の目的は子どもを産むことではないというジェンダー論の体現なのです。

同人として生きること・BLという創作物を好むことが、本当に女性の権利であり、自由であると思うなら、卑下する必要も自虐する必要もありません。だからこそ、底の浅い優越意識によって失言してしまうことのないように、充分に自重してください。


(2018年11月8日追記:同人の話題であることが分かりやすいように、タイトルの一部を変更しました。悪しからずご了承ください)


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