本年も、同人を甘く見ないでください。

「大学で勉強しなくても、同人誌でも売れば、そこそこ食って行けるだろう」などと考えていると、好きな声優さんのコンサートに行くこともできなくなります。

現時点で一番人気の同人たちよりも「絵がうまい。すごい新人が出てきた」と常連たちに思わせるようでなければ、一冊も売れないまま撤退することになるだけです。

才能がないのに、他人の真似をして、刺激的な場面だけ書けば飛ぶように売れて、勘違いすることができたのは、バブル時代だけです。


バブル以前の同人は、若い新参者がいると「親を泣かせることになるからやめておけ」と言って、諦めさせようとしました。それはライバルを増やしたくないからでもありますが、本音の忠告でもありました。本人たちが本当に苦労していたからです。

「あんな親なんか泣かせてやればいい」という中学生のような反抗心を自己目的にしてしまうと、あなたが自分の取り分である生涯賃金を失うことになります。

人生の目的なんて「毎月2.5次元ミュージカルを見に行きたい」ということでいいのですから、まず就職することを目指しましょう。

公務員試験の傾向や、自分の向いていそうな業界の歴史を知ることは、いつ取りかかっても「早すぎる」ということはありません。書店に行くと、漫画や軽小説がたくさんありますが、資格試験のための本もたくさんあるので、漫画とは違うフロアにも行ってみましょう。

大学に研究者として残ることができる人は、わずかです。それは大学の就職試験に合格するということですが、あなたが現時点で論文や実験を一本もまとめたことがないなら、自分は研究者には向いていないと見切りましょう。「最終学年で卒業論文に取りかかるまでは何もしなくていい」と思っている時点でアウトです。

論文の書き方は、おなじ道の大先輩(=指導教授)が書いた論文を読めば「こういう言葉使いで書くんだな。こういう感じの表題が必要なんだな」ということが分かります。もちろん、書き方を教えてくれる書籍もたくさん存在します。まずは、大学付属図書館に行ってみましょう。

すでに高卒で就職することが決まった人も多いことと思いますが(おめでとうございます)、長く続ける努力をしてください。

OLとして働きながら、毎晩遅くまで原稿を描くことも続けて、その苦労が認められてプロデビューした人は、実際に存在します。けれども、ごく少数です。

若い時ならではの「乗り」というもの、その時代ならではのアイディアというものがあるので、思った時に書いて(描いて)みるのは有意義ですが、それを言い訳にして、昼間の仕事の手を抜くという人になってしまわないでください。誰よりも、プロ漫画家がそう思っています。

中央の同人誌即売会は、1975年に始まって、オイルショック不況の時代に成長しました。

それは就職できなかった若者たちの救済機関という意味合いがありましたが、そこからプロデビューして、安定して印税を受け取ることができるようになった人は、ひじょうに少ないです。

その、ひじょうに少ない中に自分が入ることができるかどうかは、同人誌をイベント出展してみれば分かるわけですが、結果が出ていない内から皮算用してしまってはいけません。なんとかなるなどと甘い期待をしてしまってはいけません。

増刷の保障がなく、通信販売するにも一冊ずつ自分で発送するという同人誌(とも呼ばれる自費出版)で、住民税や国民健康保険税を含む生活費のすべてを得ることは本当にたいへんです。「同人誌を描いて売ることの自転車操業でいっぱいいっぱいで、遊びに行く時間も金もない」ということは、あり得ます。

昔は「漫画の同人誌」なんてものは、本当におとながその存在を知らなかったので、訓戒もしませんでした。

いまでは「コミケ」というものが有名になってしまい、大手メディアによるウェブニュースなどにもその話題が登場しますし、高齢者もスマホを使いこなす時代ですから、かなり多くの人が、漫画またはアニメの同人誌というものが存在して、若い人に人気らしいということを知っています。

それを単純にバッシングする時代も、やたらと持ち上げる時代も終わりました。

他の娯楽と同じように、身心の健康を損なわない程度に、理性的に自分をコントロールできる範囲で楽しみましょうと次世代に教えて行く時代です。どこの業界でも、それを生業にするということは、誠実な努力が必要であることを伝えて行く時代です。

なにごとにも良い面と悪い面があります。良い伝統を残し、誤った偏見を減らして行く努力を続けましょう。

本年もよろしくお願い申し上げます。


(※ これから大学そのものを受験する皆さんは、どうか本来の課題に戻ってください。読んでくださって、ありがとうございました。健闘を祈ります)



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