【1980年代『花とゆめ』はBL誌だったか。】


雑誌の顔は、少女漫画の王道というべき『ガラスの仮面』(美内すずえ)、不世出の天才・三原順による『はみだしっ子』、それから『スケバン刑事』(和田慎二)だったと思います。

三原作品は、可愛らしい少年たちを主人公にしたホームドラマには違いないのですが、1970年代若者文化の熱さを伝え、プログレッシブロックの影響があるなどとは言うまでもなく、今なお読みこなすには知力胆力の要る傑作です。

和田作品は、1980年代の間にテレビドラマ化され、好評を博しました。斉藤由貴、南野陽子の出世作です。

柴田昌弘『紅い牙』は、ハードな作風で、男性読者にも人気があったでしょう。

この二者は「男性作者が女子高生を主人公に、激しいアクションを演じさせる」というもので、現代のアニメ作品にも通じる流れだろうと思います。

逆に『ミルクタイムにささやいて』(酒井美羽)は、レディコミの「はしり」でしょう。子育てをテーマにしたホームドラマで、まだ18歳の新妻と、30代でクォーター設定(茶髪で眼がグリーンがかっている)の旦那様のラブシーンも味わい深い要素でした。

野間美由紀の高校生探偵ものは、コナンくんや金田一くんの先輩に当たるかと思います。主人公は女子でした。男子同級生との夜の交際を暗示する台詞がありましたが、今では書けないかもしれません。

氷室冴子の少女小説を漫画化したのも、あったはずです。きれいな絵柄でした。

山口美由紀、日渡早紀、川原泉は、愛らしい女子高生を主人公にした、なごやかな味わいの作品でデビューしました。

彼女たちは、美少年や美中年をも上手に描いたので、「耽美」の素養が偲ばれましたが、それを表に出さずに少女漫画が描けるなら、結構なことです。

遠藤淑子がデビューしたときには、そのいかにも同人上がりな画力に衝撃を受けました(笑) エヴァンジェリン姫のキャラクター性とギャグセンスは、パタリロを下敷きにしていると思われますが、愛すべき姫君であり、物語は意外や硬派なテーマ性のある感動作でした。

「マリオネット・シリーズ」は、主人公が金髪の少年貴族と、有色人種の少年の二人組だったので、『風と木の詩』トリビュートなのは明らかですが、ボーイズラブ作品ではありませんでした。年上の女性とのラブシーンがあり、笑いに流れないダークロマンの質を保っていました。

『ここはグリーンウッド』(那須雪絵)は、意図的にボーイズラブの要素を取り入れていましたが、あの程度なら1970年代にも見られたでしょう。むしろ懐かしいくらいだったかと思います。

『ツーリング・エクスプレス』(河惣益巳)と「羽根くんシリーズ」(野妻まゆみ・当時)だけが、物語の方向性を途中から曲げて行ったと思います。一般読者には「やっちまった」感を覚えた方もあったでしょう。

あのへんは、「それ言っちゃおしまい」という領域へ踏み込んでしまったので、連載を終了させたタイプじゃないかと思います。

忘れちゃいけない『パタリロ!』ですが、これは西村知美が絶賛したとおり、ミステリの要素と、落語・宝石・妖怪に関する薀蓄によって作品性を高めていたもので、美少年要素だけで長持ちしたわけではありません。

コミックスでは第5巻にあたる「スターダスト計画」は、映画化もされました。各種先行作品へのトリビュートを含みつつ、品の良いボーイズラブ要素と、乗りツッコミの笑いをマッチさせた、まとまりの良い佳品だと思います。

……あの時期の『花とゆめ』、姉妹誌の『LaLa』とも、「ポスト・ベルばら」「ポスト・風と木の詩」とでも言うべき難しい時代にあって、漫画のさまざまな可能性を試行錯誤する実験場のようなところだったように思います。

もし古本で手に入ったら、読んでみてください。熱いです。



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